青枯病・半枯病複合抵抗性のナス台木用固定品種'台三郎'
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要約
ナス栽培種の台木用固定品種'台三郎'を育成した。青枯病抵抗性は'台太郎'より強く、半枯病に対しては同等の強度抵抗性を有する。草勢は'台太郎'より強く、接ぎ木個体の収量性は'台太郎'台と同等である。
- キーワード:ナス、台木品種、青枯病、半枯病、抵抗性
- 担当:野菜茶研・果菜研究部・ナス科育種研究室
- 連絡先:電話059-268-4653、電子メールromario@affrc.go.jp
- 区分:野菜茶業・野菜育種
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
青枯病並びに半枯病は、わが国のナス栽培では極めて重要な土壌伝染性病害であり、自根栽培可能な抵抗性品種が無いために、抵抗性台木品種へ接ぎ木することにより回避している。ナス用台木品種は、近縁種または近縁種と栽培ナスとの一代雑種が中心で、強度の病害抵抗性と接ぎ木し易さを兼ね備えた品種がないことから、1995年に青枯病・半枯病複合抵抗性で、栽培ナスと同種で接ぎ木作業が容易な'台太郎'を育成したが、一代雑種であるために採種コストがかかり、草勢がやや弱いなど、改良の余地も残していた。そこで、栽培ナスで青枯病・半枯病複合抵抗性を有し、草勢の強い台木用の固定品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 1992年に'南頭茄'×'LS1934'の組合せのF2世代を展開し、以後、半枯病と青枯病の複合抵抗性について選抜を繰り返した。1999年にF9世代で諸特性が実用的に固定した系統を得たので、'台三郎'の系統名で2000~2002年にわたり特性検定・系統適応性検定試験を実施した結果、台木としての優秀性が認められた(図1、2)。
- '台三郎'は青枯病と半枯病に強度の複合抵抗性を有する(表1)。'台太郎'との比較では、青枯病抵抗性はより強、半枯病抵抗性は同等である。
- 発芽の早さ・揃い及び幼苗期の生育は'台太郎'と同等であり、幼苗接ぎ、割り接ぎともに容易である。
- 接ぎ木個体の収量は'台太郎'台のものとほぼ同等である(表2)。収穫果の果形、果色は'台太郎'台のものと変わらず、優れている。'台太郎'よりも根系が発達するので、後半の草勢は強い。
- ナス栽培種の固定品種であり、採種コストが安い。
成果の活用面・留意点
- ナスの青枯病常発地域における台木品種として利用できる。
- 半身萎凋病、ネコブセンチュウなど他の土壌病害虫に対しては抵抗性がない。また、青枯病に対しては非常に強いものの、免疫抵抗性ではなく、高温や高菌密度条件下では発病する可能性があるので、土壌消毒など他の防除法と併用することが望ましい。
- 接ぎ木個体の草勢は'トルバム・ビガー'、'トレロ'台のものに比べ少し弱いので、'台太郎'と同様に栽培後期まで草勢を維持する肥培管理が必要である。
- 低温伸長性は'ヒラナス'より劣るので、促成作型には適さない。
具体的データ




その他
- 研究課題名:多様な地域特産品種に対応した栽培適応性の広いナス・トウガラシ類用台木品種・系統の育成
- 予算区分:国産野菜
- 研究期間:1990~2002年度
- 研究担当者:吉田建実、門馬信二、松永 啓、佐藤隆徳、齊藤猛雄、坂田好輝
- 発表論文等:吉田ら(2003) 園学雑 72(1):90