「塩締め処理」によるキャベツセル成型苗の徒長抑制・耐干性付与

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

セル成型育苗における育苗後期(定植前の5日間)に0.3%のNaClを添加した低濃度液肥を底面給水する「塩締め処理」により、苗の徒長が抑制され、乾燥に強い苗になる。

  • キーワード:キャベツ、セル成型苗、育苗、NaCl、徒長、順化、耐干性
  • 担当:野菜茶研・葉根菜研究部・作型開発研究室
  • 連絡先:電話0592-68-4631、電子メールtfuji@affrc.go.jp, sakugata@ml.affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜栽培生理
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

全自動移植機の普及に伴い露地葉菜類でのセル成型苗の利用が普及した。しかし、苗が徒長すると移植機の性能を十分に発揮できないことや、育苗環境と圃場環境が異なるために植え傷みが生じるなどの問題が生じている。
そこで、育苗後期のキャベツセル成型苗にNaClを施用することによる徒長抑制・順化技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 定植前の5日間、NaClを0.3%添加した園試処方培養液の1/5濃度液を1日1回底面給水する「塩締め処理」は、根鉢(培養土及び根)の浸透圧を高め、苗地上部に適度な水ストレスを付与し、苗の乾燥条件に対する適応性を高める(図1)。
  • 「塩締め処理」は定植時の苗の徒長を抑制する(表2)。定植後に若干の生育抑制(葉面積増大抑制)が見られるが、定植後数日で解消され(表1)、有意な収量低下は認められない(表2)。
  • 「塩締め処理」2日目以降、光合成速度が約10%低下するが、蒸散速度は約45%低下するため、水利用効率(光合成速度÷蒸散速度)は約2倍となる(図2)。
  • 「塩締め処理」は葉表面のワックスの生成を促進し(表2)、蒸散量を低下させる。

成果の活用面・留意点

  • 「塩締め処理」は根鉢の形成を抑制する効果があることから、根鉢形成を確認してから処理を開始する必要がある。

具体的データ

図1 断水処理3 日後の苗の状況

図2 塩締め処理が光合成 速度、蒸散速度、水利用効率に及ぼす影響

表1「塩締め処理」がキャベツセル 成型苗の葉面積に及ぼす影響

表2 「塩締め処理」がキャベツセル成型苗の苗質及び収量に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:エブ&フロー育苗方式による葉菜類高品質苗生産システムの開発
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1998~2001年度
  • 研究担当者:藤原隆広、吉岡 宏、佐藤文生、岡田邦彦
  • 発表論文等:1)藤原ら(2002)園学雑71(6) :796-804.
    2)藤原ら(2002)園学研1(3) :169-173.
    3)藤原ら(2003)園学研2(1) :15-20