レタスビッグベイン病関連ウイルス(MiLV)の外被タンパク質遺伝子
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要約
レタスビッグベイン病の病原体と疑われているミラフィオリレタスウイルス(MiLV)を純化し、その外被タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列を明らかにした。本遺伝子は、ビッグベイン病抵抗性レタスの開発や、MiLV感染の診断に利用できる。
- キーワード:レタスビッグベイン病、ミラフィオリレタスウイルス、外被タンパク質遺伝子
- 担当:野菜茶研・葉根菜研究部・キク科育種研究室
- 連絡先:電話059-268-4650、電子メールykawazu@affrc.go.jp
- 区分:野菜茶業・野菜育種
- 分類:科学・普及
背景・ねらい
レタスビッグベイン病は日本をはじめ世界各地のレタス産地で問題となっているウイルス病で、絶対寄生菌の一種であるOlpidium brassicaeによって媒介される土壌伝染性の病害である。これまで、レタスビッグベイン病の病原ウイルスはレタスビッグベインウイルス(LBVV)と考えられていたが、最近になってビッグベイン発病レタスからミラフィオリレタスウイルス(MiLV)という新たなウイルスが発見され、MiLVが病原ウイルスではないかという報告がなされている。そこで、世界に先駆けてMiLVの外被タンパク質遺伝子を単離し、ビッグベイン病抵抗性レタスの開発や、MiLV感染の診断に役立てる。
成果の内容・特徴
- 発病レタスはLBVVとMiLVの両方を含むが、汁液接種でキノア(Chenopodium quinoa)に移すことによってMiLVを特異的に増殖させ、純化することができる。電子顕微鏡観察ではMiLV粒子のみが観察され(図1-a)、電気泳動では一本のバンド(外被タンパク質)のみが検出され(図1-b)、高純度の純化ウイルスを得ることができる。
- 純化ウイルスを用いて、外被タンパク質の内部アミノ酸配列を明らかにすることができ(図2)、決定したアミノ酸配列を基にして、PCR法により外被タンパク質遺伝子を分離することができる。
- 単離されたMiLVの外被タンパク質遺伝子は1514個の塩基配列から構成されており、分子量48.5kDaで437アミノ酸の外被タンパク質をコードしている(図2)。
- 塩基配列から予想されるアミノ酸配列(図2)は、MiLVと同じ属のCitrus psorosis virusの外被タンパク質の配列と約30%の相同性(identity)がある。
成果の活用面・留意点
- 遺伝子組換え技術を用いて本遺伝子あるいはその一部をレタスに導入することにより、ビッグベイン病抵抗性レタスの開発に利用できる。
- 本遺伝子の塩基配列をもとにプライマーや抗体を作製し、PCR法や抗体を用いることにより、(1)レタス根や土壌中に存在するOlpidium brassicaeがMiLVを保毒しているかどうかの診断、(2)レタスがMiLVに感染しているかどうかの診断、(3)レタス品種の抵抗性検定、に利用できる。
- 本遺伝子の塩基配列は、データベース(DDBJ、EMBL、GenBank)で見ることができる(アクセッションナンバー:AF532872)。
具体的データ
その他
- 研究課題名:ビッグベイン病抵抗性レタスの開発
- 予算区分:組換え植物
- 研究期間:2002~2005年度
- 研究担当者:川頭洋一、笹谷孝英(近中四農研)、守川俊幸(富山農技セ)、杉山慶太、夏秋知英(宇都宮大)
- 発表論文等:1)Kawazu et al. (2003) J. Gen. Plant Pathol. 69(1) : 55-60.
2)特許出願 (2002) 特願2002-209805