食品中抗がん転移・抗リウマチ物質検定のための簡易測定法
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要約
マイクロプレート比色法を用いて、食品に存在する抗がん転移や抗リウマチ検定に対する機能性物質量を簡易に測定できる方法を確立した。本方法は、従来のゼラチンザイモグラム法に比べ効率性、簡便性に優れる。
- キーワード:マイクロプレート比色法、食品、がん転移、リウマチ、簡易検定法
- 担当:野菜茶研・機能解析部・茶機能解析研究室
- 連絡先:電話0547-45-4964、電子メールmarimy@affrc.go.jp
- 区分:野菜茶業・茶業
- 分類:科学・普及
背景・ねらい
近年、消費者の健康志向の高まりから食品のもつ機能性が注目され、その解明が強く求められてきている。また、医療費増大への危惧などから、機能性食品の開発に対する期待が高まってきた。そこで、生体内細胞が分泌し血管内がん転移(浸潤)、リウマチ疾患などの疾病を増悪化する基底膜破壊酵素(マトリクスメタロプロテナーゼ;MMP)阻害作用をもつ機能性成分を食品中から効率的かつ簡易に検索する手法(ビオチン標識ゼラチンを用いた比色法)を開発し、高付加価値機能性食品開発のために資する。
成果の内容・特徴
- 本簡易測定法は、ストレプトアビジンとビオチンが高い親和性を持っていることを利用したELISA(酵素抗体標識法)応用マイクロプレート比色法であり、煩雑な従来法(ゼラチンザイモグラム法:電気泳動法)で2日かかる測定が、約5時間に短縮される。本方法は、図1に示すように、ストレプトアビジンが共有結合したマイクロプレートにあらかじめ食品成分添加下でMMP酵素を反応させたビオチン標識ゼラチン基質を添加し、残存するビオチンをペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンでさらに挟み、ペルオキシダーゼでTMB基質を発色させて450nmにおける吸光度を測定することにより、食品成分によるMMP活性阻害の差によりビオチン標識ゼラチン消化率の違いを検出するものである。
- 至適と考えられた条件でのMMP-2(pH7.5)、MMP-9(pH9.0)の濃度と吸光度との関係を検討したところ、MMP-2、MMP-9ともに吸光度が濃度の対数に比例するスタンダードカーブが得られる(図2)。
- 本測定法で求めた茶葉中MMP阻害物質であるエピカテキンガレート(ECg)のMMP-2のIC50(50% of inhibitory concentration; 50%の阻害効果が見られる濃度)は1.17μg/ml(図3A)であり、ゼラチンザイモグラム法の結果と一致する(図3B)。
成果の活用面・留意点
- エラスターゼ等のプロテアーゼ測定にも利用しうる。
- MMP-9については、アルカリ性で不安定な物質の評価は困難である。
- 本方法を使用することにより、食品中のがん転移抑制物質、抗リウマチ因子を見いだすことが可能であり、新規機能性食品素材探索に有効である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:動物細胞を用いた簡易な機能性検定法の開発(食品中機能成分の簡易検定法の開発)
- 予算区分:岐阜県RSP事業、交付金
- 研究期間:1999~2001年度(2001年度)
- 研究担当者:山本(前田)万里、浅井和美、倉本雄一郎、辻 顕光
- 発表論文等:1)山本(前田)ら (2003):茶研報、94、37-44