DNAマーカーによるイチゴの品種識別技術

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要約

イチゴの品種間で異なった配列を持つ複数のDNA部位に着目し、これらの配列をDNAマーカーとして検出することにより、国内で流通している主要な品種を識別することができる。

  • キーワード:イチゴ、育成者権、偽装表示、DNAマーカー、多型、品種識別
  • 担当:野菜茶研・機能解析部・遺伝特性研究室
  • 連絡先:電話059-268-4655、電子メールmiyuky@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜育種
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

イチゴの品種名は消費者によく知られており、大きさや鮮度とともに購買動機の一つとなっている。そのため「さちのか」等の人気品種は、育成者権を侵害した国内外での無断栽培や、店頭での品種偽装表示の対象とされる問題が発生している。そこでイチゴのDNAを解析することにより、外観による識別よりも正確な品種識別技術を確立し、育成者権の保護と偽装表示防止の一助とする。

成果の内容・特徴

  • イチゴの品種間で異なるDNA配列を持つ多型部位5箇所(APX-MluIA、APX-MluIB、CHI-PvuII、F3H-NcoI、F3H-HpaII)をターゲットとする(図1:F3H- HpaII部位)。
  • 品種の識別手順は以下の通りである。
    ・果実よりDNAを抽出する。
    ・PCR法によりDNA部位を増幅する。
    ・制限酵素で増幅DNAの切断処理を行う。
    ・アガロースゲル電気泳動により多型を検出する(図2)。
  • 最低5つのDNAマーカーを併用することにより、「章姫」と「けいきわせ」を除く12品種の識別が可能である(図3)。
  • 果実から識別までの所要時間(10~20サンプルの場合)は8時間程度である。

成果の活用面・留意点

  • 分析対象のイチゴ品種が上記12品種のいずれかである場合に、品種の特定が可能である。
  • 新たな品種を分析する場合、それに対応したマーカーの開発が必要である。
  • 本法の商業的使用に当たっては、PCR法の特許許諾を得る必要がある。
  • 本法によるイチゴの品種識別は、日本食品分析センターで受注している。

具体的データ

図1.イチゴ品種間における異なるDNA配列と制限酵素 認識部位の有無

図2.DNAマーカーによる イチゴ主要品種の多型検出パ ターン

図3.マーカーの有無に よる品種分類

その他

  • 研究課題名:DNA鑑定によるイチゴ品種識別技術の開発
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001年度
  • 研究担当者:國久美由紀、松元哲、吹野伸子