キャベツ栽培における畝内条施肥による窒素の利用率向上と溶脱低減

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要約

夏まき年内どりキャベツの全量基肥栽培における被覆肥料の畝内条施肥は、慣行の全層施肥法と比べ、施肥窒素利用率が向上し溶脱量が低減する。

  • キーワード:キャベツ、畝内条施肥、被覆肥料、窒素利用率、窒素溶脱、窒素動態、根系分布
  • 担当:野菜茶研・葉根菜研究部・土壌肥料研究室
  • 連絡先:電話029-838-7312、電子メールkikuchi@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜生産環境
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

キャベツ等の重量野菜では、省力・軽労化のため、機械化栽培体系の確立が急務であり、施肥窒素による環境負荷を低減する機械化施肥技術が必要である。そこで、局所施肥機を利用した被覆肥料の施用位置の制御が、土壌中における窒素の動態、キャベツの根系、生育、養分吸収に及ぼす影響を解明し、施肥窒素の利用率向上と溶脱低減技術の開発に資する。

成果の内容・特徴

  • 野菜茶業研究所内圃場(黒ボク土)において、被覆肥料(ロング424-40)を全量基肥で施用し(図1)、キャベツ(品種:'松波')を栽培(夏まき年内どり)すると、生育は慣行の全層区よりも条施肥した区(局所区)で高く推移し、特に株下20cmに条施肥した下部局所区が旺盛で、収量も高くなる(図2、表1)。
  • 生育中期(定植後57日目)では、土壌中の硝酸態窒素は全層区では比較的広い範囲に分布するが、局所区では局所施肥部周辺に局在する(図3)。また、収穫時(定植後101日目)の土壌中の硝酸態窒素濃度は、全層区では減少が著しいが、局所区では硝酸態窒素分布の変動が少なく、局所施肥部周辺の硝酸態窒素濃度は高く維持される(図3)。
  • 根系分布は土壌中の硝酸態窒素濃度の影響を受け、局所区では局所施肥部周辺の密度が高くなる傾向がある(図3)。
  • 施肥窒素利用率は局所区、特に下部局所区で顕著に高く(表1)、溶脱窒素量も局所区は全層区と比べ約3割減少する(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 特定の条件(作型、品種、土壌等)での結果であることに留意する。
  • 専用の施肥機を用いることで、畝内条施肥を効率的に行うことができる。

具体的データ

表1 施肥方法がキャベツ生育・窒素吸収および窒素溶脱量に及ぼす影響

図1 施肥位置 図3 施肥位置がキャベツ根系分布および土壌中の硝酸態窒素分布に及ぼす影響
図2 施肥位置がキャベツ生育に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:野菜の根系活性分布の解明による精密養分管理技術の開発、
    野菜畑における環境負荷発生ポテンシャルの解明と最小化技術の開発
  • 予算区分:軽労化農業、自然循環
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:菊地直、木村武、宮地直道、村上弘治