ハクサイ根こぶ病抵抗性個体を選抜可能なマイクロサテライトマーカー

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要約

開発したハクサイ根こぶ病抵抗性遺伝子座に連鎖したマイクロサテライトマーカー2種類は異なる病原菌レースに対応しており、抵抗性個体を効率的に選抜することに利用できる。

  • キーワード:マイクロサテライト、DNAマーカー、ハクサイ、根こぶ病
  • 担当:野菜茶研・機能解析部・遺伝特性研究室、育種工学研究室、葉根菜研究部・アブラナ科育種研究室
  • 連絡先:059-268-4655、電子メールssmats@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜育種
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

ハクサイ・キャベツ等のアブラナ科野菜にとって、根こぶ病は難防除の土壌病害の一つである。抵抗性品種の育成が本病害の防除には効果的であるが、根こぶ病菌のレース分化により抵抗性品種の罹病化が問題となっている。また育成には汚染圃場での選抜が必要であり、育種規模の拡大には効率的な育種法の開発が望まれている。そこで、DNAマーカーの一つであるマイクロサテライト(SSR : Simple Sequence Repeat)を用いて異なる2つのレースに対して抵抗性個体のみを効率的に選抜できる技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 根こぶ病罹病性系統「はくさい中間母本農7号」と飼料用カブ「Siloga」由来の抵抗性系統「G004」の交配後代F3集団を用いて、2つの異なる根こぶ病菌「Ano-01」と「Wakayama-01」を別々に接種し、無病徴を示す0から激甚の3まで発病指数(図1)を設定した抵抗性検定を行った。この両親間で多型を示すSSRマーカーの中で、BRMS-173、BRMS-096(図2)は抵抗性個体と連鎖関係にある。
  • 抵抗性親に由来するBRMS-173マーカーをホモに有する個体群における「Ano-01」菌の発病指数は0.74、ヘテロでは1.83であり、有しない個体群の2.99に対して極めて高い抵抗性を示す(表1)。しかし「Wakayama-01」菌に対してはBRMS-173マーカー単独では選抜の効果はほとんどない。
  • 「Wakayama-01」菌に対しては、抵抗性親由来のBRMS-173とBRMS-096マーカーを同時に有する個体群を選抜すると発病指数は0.64となり極めて高い抵抗性を示す(表2)。
  • 飼料用カブ「Siloga」由来の系統の選抜では、2つのマーカーをホモに有する個体を選抜することにより効率的な個体選抜が可能である。

成果の活用面・留意点

  • ハクサイ根こぶ病抵抗性遺伝子座は上記の2座以外にも存在する可能性があるため、用いる系統の抵抗性とマーカーとの連鎖関係を把握しておく必要がある。

具体的データ

図1 根こぶ病の発病指数

図2 根こぶ病抵抗性遺伝子座に連鎖するSSR マーカーの多型パターン

表1 BRMS-173 マーカーの有無が2つの根こぶ病 菌の発病指数に及ぼす影響

表2 SSR マーカー(BRMS-173,BRMS-096)の 組み合わせがWakayama-01 の発病指数に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:アブラナ科野菜とアラビドプシスにおける病害抵抗性遺伝子の対応関係の解明
  • 予算区分:重点支援
  • 研究期間:1999~2004年度
  • 研究担当者:松元哲、平井正志、布目司、諏訪部圭太、塚崎光、畠山勝徳、藤村みゆき
  • 発表論文等:1)松元ら 特願 2002-302280