オオタバコガの地域個体群における休眠誘起条件の変異
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要約
オオタバコガの休眠誘起条件は地域個体群によって大きく異なり、幼虫が短日条件で育つと蛹が休眠に入るタイプと、休眠性を持たないように見えるタイプがある。ただし、後者も若齢幼虫期に日長条件が長日から短日に変化することによって休眠に入る。
- キーワード:オオタバコガ、休眠性、休眠誘起条件、光周反応、変異性
- 担当:野菜茶研・葉根菜研究部・虫害研究室
- 連絡先:電話059-268-4643、電子メールhamamura@affrc.go.jp
- 区分:野菜茶業・野菜生産環境
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
オオタバコガは1994年以降、西日本各地の多くの作物で多発生するようになった。本種を効率的に防除するためには発生生態を明らかにする必要があるが、その生態解明は不十分である。本種は蛹で越冬するが、春の羽化時期に大きなバラツキがあることが知られ、休眠との関連が考えられる。しかし、本種の休眠性についても不明な点が多い。そこで、日本各地のオオタバコガの休眠誘起条件を明らかにし、本種の起源に関する情報を得ると共に発生生態の解明に役立てる。
成果の内容・特徴
- 鹿児島、三重、長野、茨城の4系統の光周反応には著しい変異が見られる(図1)。
- 長野および三重系統は、20℃短日条件で発育すると高い休眠率を示す(図1)。しかし、臨界日長(休眠率50%を示す日長)には約1時間の違いが認められる。
- 鹿児島系統は20℃短日条件で発育しても休眠率は極めて低い(図1)。しかし、若齢幼虫期の12日間を長日に置いた後、短日条件に移すと蛹の休眠率は高くなる(表1)。
- 鹿児島系統は13L(明期13時間:暗期11時間の意味、以下同じ)以上を長日、12L以下を短日と認識して、その間の日長の減少によって、休眠している(表2)。
- 茨城系統は2つのタイプの中間的な休眠性を示す(図1)。
成果の活用面・留意点
- 休眠性は遺伝的性質であることから、これらの系統は起源の異なる個体群である可能性が示唆される。
- 鹿児島系統のようなタイプは自然状態では、特定の時期に発育した個体のみが休眠に入ると考えられることから、冬期は休眠蛹と非休眠蛹が混在し、翌春の羽化時期のばらつきの一因になると考えられる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:オオタバコガの休眠性の解明
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2001~2002
- 研究担当者:浜村徹三、篠田徹郎