脂質および乳化剤によるケルセチンの腸管吸収効率改善
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要約
野菜類に含まれる代表的なフラボノイドであるケルセチンは、ラット腸管からの吸収効率が脂質や乳化剤の共存下で有意に高まり、脂質と乳化剤を併用するとさらに吸収が良くなる。
- キーワード:ケルセチン、フラボノイド、ラット、腸管吸収、脂質、乳化剤
- 担当:野菜茶研・機能解析部・品質解析研究室
- 連絡先:電話059-268-4636、電子メールazumak@affrc.go.jp
- 区分:野菜茶業・野菜品質・情報
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
フラボノイド類は様々な生理機能を持つことが知られ、中でも抗酸化性は活性酸素が関与するとされる多くの疾病、特に動脈硬化やがんの予防との関連から注目されている。野菜類に広く存在するケルセチンは、フラボノイド類の中でも強い抗酸化活性を有することが知られている。しかし、ケルセチンを含め、フラボノイド類の生体内における吸収・代謝や機能は十分に解明されていない。本研究では、ケルセチンの腸管吸収効率を高める食品成分を見いだす。
成果の内容・特徴
- ケルセチンを経口投与したラットでは、脂質と乳化剤の共存により血漿中のケルセチン代謝物(ケルセチン抱合体およびイソラムネチン抱合体)濃度が有意に増大し、腸管吸収効率が高まる(図1)。
- ケルセチン添加飼料摂取ラットの血漿中ケルセチン代謝物濃度は、脂質あるいは乳化剤の共存で有意に高まり、脂質と乳化剤を組み合わせるとさらに増大する。脂質のうち、大豆油よりも乳化作用を持つレシチンの方がケルセチンの腸管吸収効率を高める効果が大きい(図2)。
成果の活用面・留意点
- タマネギ、レタス、ブロッコリー、モロヘイヤ等のケルセチンを多く含む野菜の摂取においては、油を使った調理をしたり油脂食品やエマルジョン食品と一緒に摂取することで、ケルセチンの吸収効率が高まることが期待できる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:野菜類に含まれるフェノール性抗酸化成分の腸管吸収と酸化ストレス防御効果に及ぼす
共存成分の作用解明
- 予算区分:食品成分
- 研究期間:2000~2001年度
- 研究担当者:東 敬子、一法師克成、伊藤秀和、東尾久雄
- 発表論文等:1) Azuma et al. (2002) J. Agric. Food Chem., 50:1706-1712.