新品種'そうふう'に特徴的に含まれる香気成分アントラニル酸メチル

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要約

新品種'そうふう'は、従来の緑茶品種にはまれな独特の甘い花香を有しており、この花香に関与する成分として、他の緑茶品種にはない特徴的な香気成分アントラニル酸メチルを含有する。この成分は交配親である'静-印雑131'から受け継いだものである。

  • キーワード:アントラニル酸メチル、'そうふう'、'静-印雑131'、香気成分、花香
  • 担当:野菜茶研・茶業研究部・製茶システム研究室
  • 連絡先:電話0547-45-4950、電子メールysawai@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・茶業
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

'そうふう'は、2002年に命名登録された新品種であり、緑茶および半発酵茶に適している。'やぶきた'を種子親、'静-印雑131'を花粉親としており、'静-印雑131'から受け継いだ独特の甘い花香を品質上の特徴とする。そこでこの花香に関与する成分を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 'そうふう'の煎茶の香気分析を行うと、'やぶきた'など他の緑茶用品種で製造された煎茶には含まれない成分としてアントラニル酸メチル(分子式:C8H9O2N、分子量:151)が見出される(図1)。
  • 'そうふう'や'静-印雑131'の浸出液には、ヒトに対する閾値を超える濃度のアントラニル酸メチルが含まれており、香気に寄与している(表2)。
  • アントラニル酸メチルは'そうふう'の花粉親である'静-印雑131'にも含まれる(図1)。また、'やぶきた'を花粉親、'静-印雑131'を種子親として育成された品種'ふじかおり'にもこの成分は含まれる(データ略)。
  • アントラニル酸メチルは、ウーロン茶(半発酵茶)や紅茶(発酵茶)などの萎凋発酵で増加する香気成分とは異なり、'そうふう'の生葉を萎凋させずに製造する不発酵茶にも含まれる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • アントラニル酸メチルはブドウやジャスミンに含まれる香気成分である。'そうふう'の甘い花の香りはこれらの香りと関係づけられる。
  • アントラニル酸メチルの沸点は比較的高いため、'そうふう'の香りの特徴を出すには高温で抽出するとよい。
  • 品種間差を成分的に表す1指標となる。

具体的データ

図1 'そうふう、やぶきた、静-印雑131'のガスクロマトグラム

表2 アントラニル酸メチルの閾値表3 香気成分の比較

その他

  • 研究課題名:かまいり茶香気成分の検討
    新香味茶向き原葉特性の解明と利用
    「べにふうき」、「そうふう」の加工適性の解明
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1995~1997、1999~2003年度
  • 研究担当者:澤井祐典、山口優一、吉冨 均