チャ栽培体系の温室効果ガス発生量の評価

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

チャの生葉生産における二酸化炭素発生量を解析すると、防霜作業で二酸化炭素発生量が大きく、全作業による発生量の63~78%を占める。また施肥窒素からの亜酸化窒素発生を二酸化炭素に換算すると、直接生産過程の4.2~9.2倍となる。

  • キーワード:二酸化炭素、温室効果ガス、茶、亜酸化窒素、インベントリ分析
  • 担当:野菜茶研・茶業研究部・土壌肥料研究室、作業技術研究室
  • 連絡先:電話0547-45-4101、電子メールmatuok@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・茶業、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

茶栽培でも、施肥量の適正化をはじめとする環境負荷削減への取り組みが行われている。そこで、チャの生葉生産過程全体における環境負荷を解析するため、ライフサイクルアセスメント(LCA)手法の一部であるインベントリ分析によって、茶生葉生産における二酸化炭素発生量の環境負荷評価を行う。特に施肥と農作業による負荷を評価する。

成果の内容・特徴

  • 既存資料から鹿児島県南部地域を想定した大型乗用型機械化体系と静岡県中部地域を想定した可搬型機械化体系の茶生葉生産モデルを評価範囲に設定した(表1)。
  • 茶園管理作業による二酸化炭素発生量は、大型乗用型機械化体系で330.7kg/10a/year、可搬型機械化体系で151.3kg/10a/yearと試算される(図1)。その最大の発生源は一番茶の防霜時の電力消費で、大型乗用体系では散水氷結用スプリンクラー加圧ポンプで259.1kg/10a/year、可搬型体系では防霜ファン電力で95.3kg/10a/yearと見つもられ、茶園管理作業による二酸化炭素発生全量の63~78%である(図1)。
  • 窒素施肥に由来する亜酸化窒素の発生は、施肥量が増えると急速に増加し、10アールあたり年間窒素成分施用量40kgでは亜酸化窒素として2.8kg/10a、同60kgで4.4kg/10a、同80kgでは5.8kg/10a、100kgでは7.8kg/10a、と試算される(表2)。
  • 茶園から溶脱した窒素が地下水として湧出時に放出する亜酸化窒素(二次的放出)は直接茶園から放出される量に比べるとかなり小さいと見積もられる(表2)。
  • 亜酸化窒素を二酸化炭素に換算(亜酸化窒素の温暖化係数310=亜酸化窒素1が二酸化炭素量310に相当する)すると、施肥による負荷(窒素施肥量80kgのとき約1385kg)が茶園管理作業による負荷(可搬体系151kg、大型乗用体系331kg)を大きく越え、茶園管理作業から出る二酸化炭素量の4.2~9.2倍となる。したがって、施肥量削減による亜酸化窒素放出の抑制が、茶生葉生産における二酸化炭素等温室効果ガス発生削減対策の第一優先順位となる。
  • 亜酸化窒素を含めると、茶生産では現在の平均的農家施肥量(年間窒素80kg/10a程度)では、10年前の水準(年間窒素100kg/10a以上)に比べ二酸化炭素に換算した温室効果ガス負荷は20%以上削減されていると推定される。

成果の活用面・留意点

  • 試算した二酸化炭素発生量は標準的なモデル体系の推計値である。茶生葉生産では施肥による亜酸化窒素の放出と農作業機械による負荷に注目して解析してある。
  • 亜酸化窒素発生率はとりまとめ時までに公表されている数値で試算してある。
  • 茶生産農家の現実の窒素施肥量の詳細な実態調査は行われていないので推定である。

具体的データ

表1 モデル体系

図1 機械作業体系による二酸化炭素排出量

表.年間窒素施肥量別にみた茶園2 からの亜酸化窒素(N2O)発生量の試算結果

その他

  • 研究課題名:茶栽培におけるLCAの農業生産技術への適応
  • 予算区分:LCA
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:松尾喜義、荒木琢也