野菜類を加害するコナダニ類の新しいモニタリング法

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要約

湿らせた濾紙と乾燥酵母あるいはオニオンパウダーを材料とした新型トラップを使用することにより、ホウレンソウケナガコナダニ成虫とロビンネダニ成虫の効率的かつ簡便なモニタリングが可能である。

  • キーワード:コナダニ類、ホウレンソウケナガコナダニ、ロビンネダニ、コナダニトラップ、モニタリング
  • 担当:野菜茶研・果菜研究部・虫害研究室
  • 連絡先:電話 059-268-4644、電子メール kasugas@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜生産環境、共通基盤・病害虫
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

コナダニ類は増殖率が高い上、土壌中や有機質資材中で増殖した後に野菜を加害するため防除適期を把握することが難しい。コ ナダニ類の野菜加害は施設栽培を中心に拡大傾向にあり、特別な装置が必要で手間のかかる従来のツルグレン法に代わる効率的かつ簡便なモニタリング法の開発 が強く望まれている。本研究では、コナダニ類の代表的な野菜害虫であるホウレンソウケナガコナダニとロビンネダニを対象として、乾燥酵母あるいはオニオン パウダーを誘引餌とした新型トラップによる土壌生息性コナダニ類のモニタリング法の有効性を検証する。

成果の内容・特徴

  • ダニの計数のために1 cm程度の間隔で線をひいた濾紙(9 cm径、No. 2)を約1.4 mlの水で湿らせ、線をひいた面に乾燥酵母またはオニオンパウダーを約0.2 gふりかける。処理面を内側に二つ折りにしてゼムクリップでとめたものをコナダニトラップとする。これを調査用土壌100 cm3の入ったチャック袋(20×14 cm)に入れて土壌中のダニを捕獲する(図1)。
  • 袋に入れた土壌(黒ボク土 含牛糞堆肥5 %、含水率20 %)100 cm3にダニを20頭接種し、そこにコナダニトラップを入れて20℃全暗条件下に静置すれば、ホウレンソウケナガコナダニ成虫はオニオンパウダーよりも乾 燥酵母でより多く捕獲され、捕獲率は1日設置で約70 %、3日間設置で約90 %となる(図2)。従って乾燥酵母を餌としたコナダニトラップによりホウレンソウケナガコナダニの効率的なモニタリングが可能である。
  • ロビンネダニ成虫の捕獲率は乾燥酵母とオニオンパウダーのいずれを餌としても同程度であり、3日間設置で70 %前後の捕獲率が得られる(図2)。
  • 本モニタリング法は、専門的な道具を必要としないことや、土壌の落下・混入がない点でツルグレン法より使いやすい。また、省スペースで一度に多くのサンプルを処理できる。

成果の活用面・留意点

  • 本トラップを使用することにより土壌生息性コナダニ類のモニタリングが容易になり、個体数や空間分布に基づいた科学的なコナダニ個体群管理が可能になる。
  • ホウレンソウケナガコナダニ、ロビンネダニともに、発育ステージが若いとトラップでの捕獲率は低下する。
  • 長期間設置すると捕獲されたダニがトラップ上で増殖することや、トラップが糸状菌や細菌に汚染されることがあるため、設置期間は20℃で3日以内が適当である。
  • 土壌条件やコナダニ密度が異なれば捕獲率が変化する可能性があるので、捕獲率を確認した上で使用するのが望ましい。

具体的データ

図1 コナダニトラップの作成手順と使用方法.

 

図2 コナダニトラップによるダニの捕獲率.

 

その他

  • 研究課題名:野菜類を加害するコナダニ科のモニタリング法の開発
  • 課題ID:11-05-03-01-15-03
  • 予算区分:特別研究員
  • 研究期間:2003年度
  • 研究担当者:春日志高、本多健一郎、天野 洋(千葉大学)