エブ&フロー方式によるキャベツセル成型育苗基本技術

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要約

エブ&フロー方式を用いたキャベツセル成型苗生産において、肥料が添加されていない育苗培養土を用い、子葉展開後から1/8倍濃度大塚A処方養液を128穴セルトレイ当たり10L供用することで、斉一性の高い苗生産が行える。

  • キーワード:キャベツ、育苗、底面給水、斉一性向上
  • 担当:野菜茶研・葉根菜研究部・作型開発研究室
  • 連絡先:電話059-268-4631、電子メールhalmens@affrc.go.jp、sakugata@ml.affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜栽培生理
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

これまでに省力的な健苗生産のため、育苗プールと培養液タンク・ポンプで循環型底面給水を行うエブ&フロー方式育苗法(図1)を開発した。これは、かん水ムラがなく斉一な苗が生産できる方式であり、育苗開始時に所定の濃度に調整し、育苗期間中に蒸発散で失われた液量を水道水で補う受動的制御で培養液管理を行う方式である。
そこで、現場で普及させる際に必要な技術的要件について詳細に明らかにし、基本技術として体系化を図る。

成果の内容・特徴

  • 肥料が添加されていない育苗培養土を用い、子葉展開時(播種後5~7日程度)まで施肥を控えることで、徒長が抑えられ、生育の斉一性が向上する(表1-a)。
  • 出芽に適した培養土の温度は30~35℃であり、40℃を上まわると出芽率が低下する。したがって、播種時期が高温期に当たる場合は、播種後二日程度(出芽直前まで)風通しの良い日陰で経過させることで、出芽率の低下が防げる(表1-b)。
  • 揃いの良い健苗育成に必要な窒素施用量は1株当たり2.5mgである(表2)。
  • 最適培養液濃度(育苗開始時)・量は、大塚A処方1/8倍濃度・10L/トレイである(表3)。
  • かん水は1日1回、朝に10分程度行う。培養土が培養液で飽和されるので盛夏においても1日1回で充分である。

成果の活用面・留意点

  • 成果の内容は128穴セルトレイを用い、キャベツ‘松波’を用いたものである。
  • 苗立枯病(ピシウム、リゾクトニア) が発生すると培養液を介して拡大しやすいので、セルトレイ等の用具は次亜塩素酸カルシウム剤などを用いて念入りに洗浄・消毒を行う。
  • エブ&フロー方式はかん水量の調節が難しいので、雨天時には培養土の湿潤程度に応じてかん水を停止することが望ましい。

具体的データ

図1 エブ&フロー育苗システムの概略図

 

表1 出芽時の諸条件がキャベツ苗の生育に及ぼす影響

 

表2 1株当たりの肥料施用量がキャベツ苗の品質に及ぼす影響

 

表3 育苗開始時の培養液濃度・量がキャベツ苗の品質に及ぼす影響

 

その他

  • 研究課題名:エブ&フロー育苗方式による葉菜類高品質生産システムの開発
  • 課題ID:11-01-02-01-05-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:生駒泰基、村上健二、岡田邦彦、 藤原隆広、佐藤文生、吉岡宏
  • 発表論文等:吉岡ら(2002)園学研.1:175-178