チャの精密栽培地帯区分図の作成と温暖化シミュレーション

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要約

従来漠然と言葉により定義されていた栽培地帯区分を最寒月の日最低気温の月平均値を用いて明確な区分地図を作製した。これを利用することで地帯区分が正確になり、気候温暖化に伴う区分の変化を予測できる。

  • キーワード:栽培指針、品種選択、新産地開発、気候変動、温暖化対応
  • 担当:野菜茶研・機能解析研究部・茶生理遺伝研究室
  • 連絡先:電話0547-45-4101、電子メールnmizuno@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・茶業、総合農業・農業気象
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

茶の栽培管理法や品種選択はこれまで地帯区分により整理されてきた。「茶の科学用語辞典」によれば、暖地は「南九州以南」、温暖地は「東海地方から四国、 九州(南九州を除く)」、寒冷地は「関東地方以北及び各地の高冷地」、と説明されているが漠然としたものであり、時に用いられる冷涼地、山間冷涼地、高冷 地、栽培不能地等については言及がなく、この定義からは明確な判定が困難な場合も多い。一方近年各方面で地球温暖化が喧伝されるようになったが、温暖化し た段階で茶栽培にどの様な変化が起きるかは明らかでない。これらの問題は、地帯区分を温度により定義して区分図を作成し、次にその温度を変化させたとき区 分がどうなるかを調べることで解決できる。

成果の内容・特徴

  • 作成した栽培地帯区分図は「金谷は温暖地」など従来の地帯区分でいわれていることを気温メッシュ統計値の当該メッシュと対応させるなどにより、用語と境界温度値を整理し(図1)、区分図として表したものである(図2)。
  • IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)の2100年における予想の最大値の5.8℃を考慮し、温度による地帯区分方法はそのままとして、各メッシュの基準温度に2℃、4℃、6℃ を加えたデータに対して区分を行うことで図3a、b、cを得る。
  • 6℃の温度上昇が起きても栽培上懸念のある亜熱帯域の拡大は限定的である一方、本州と北海道西部の大部分で栽培可能となる。
  • ネット上で公開中の画像ファイルを拡大すれば、県域単位の区分図も1kmの解像度で利用できる。

成果の活用面・留意点

  • 従来の言葉による定義と比較して、1kmの空間解像度で判断が出来るようになったことは大きな進歩であるが、微気象や土地条件などの情報は考慮されていないので、実際の利用では現場での判断も加味する必要がある。
  • 本成果により地帯判別のみならず、品種選択、栽培指針をより正確なものとすることが可能となる。現在製茶システムのコン ピュータ化が進んでおり、製造に高度の知識と経験を必要とすることが少なくなってきている。このため以前よりも新産地開発がより行いやすくなっているが、 その際の参考情報として有用である。
  • 近年頻発している異常気象に関連して、農家に気候温暖化への懸念が見られるが、それを払拭する情報として有用である。

具体的データ

図1 最寒月の平均最低気温による地帯区分

 

図2 現在の栽培地帯区分

 

図3 温暖化後の地帯区分

 

その他

  • 研究課題名:気象メッシュ統計値を用いた栽培地帯区分の精密化
  • 課題ID:11-10-05-01-03-02
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002年度
  • 研究担当者:水野直美
  • 発表論文等:水野(2002)茶研報93:62-69