環境ストレス耐性組換えコマツナの作出

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要約

シロイヌナズナ由来の転写因子遺伝子(DREB1A )をコマツナに導入することで、凍結、乾燥、塩ストレス耐性をもつ植物を作出することができる。この形質転換系統を利用して、交雑により遺伝子組換えが困難なハクサイなどにも導入が可能である。

  • キーワード:コマツナ、ストレス耐性、DREB1A 、プロモーター、遺伝子組換え
  • 担当:野菜茶研・葉根菜研究部・アブラナ科育種研究室
  • 連絡先:電話059-268-4654、電子メールryutoku@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜育種
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

キャベツやハクサイはわが国の重要な露地野菜であり、冬季の低温・凍霜害や夏季の乾燥などによる被害が、安定生産・供給への障壁の一つとなっている。そこで、シロイヌナズナ由来の環境ストレス(低温・乾燥・塩)耐性に関与する転写因子遺伝子(DREB1A )をアブラナ科野菜に導入することにより、ストレス耐性育種素材を開発する。

成果の内容・特徴

  • 35Sプロモーターを用いてDREB1A を恒常的に発現させた形質転換コマツナ系統(35S::DREB1A)では、低温耐性の指標の一つであるプロリンの含量が、低温無処理でも高まり、低温処理によってさらに増加する(図1)。
  • ストレス誘導性rd29AプロモーターによりDREB1A を発現させた系統(rd29A::DREB1A)では、プロリン含量が低温無処理では野生型と同程度であるが、低温処理によって35S::DREB1A系統と同程度まで高まる(図1)。
  • 形質転換系統は、播種後4週間の植物体を凍結処理した際に、低温順化した野生型と同程度の高い生存率を示す(表1)。
  • 形質転換系統は、播種後4週間の植物体を乾燥処理または吸水させた種子を塩水処理した際に、野生型よりも明らかに高い生存率、発芽率を示す(表1)。
  • rd29A::DREB1A系統では、野生型と同様な生育を示し、花粉稔性も低下しない(表2)。
  • 形質転換系統と野生型ハクサイとのF1でも、凍結処理や乾燥処理を行った際に高い生存率を示す(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 交雑により遺伝子組換えが困難なハクサイなどへ環境ストレス耐性を導入することが可能であるために、高度ストレス耐性の育種素材として利用できる。
  • プロモーターの種類によっては、生育の異常や花粉稔性の低下などの問題が生じる可能性がある。

具体的データ

図1 形質転換コマツナ系統におけるプロリン含量

表2 形質転換コマツナ系統における花粉稔性

表1 形質転換コマツナ系統における環境ストレス耐性

表3 形質転換コマツナ系統とハクサイとのFにおける環境ストレス耐性

その他

  • 研究課題名:アブラナ科野菜における高度ストレス耐性植物の作出
  • 課題ID:11-09-01-01-02-02
  • 予算区分:組換え植物
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:塚崎光、畠山勝徳、釘貫靖久、春日美江(国際農研セ)、篠崎和子(国際農研セ)、鈴木徹