ウリ科果菜類の苗に対するトマトハモグリバエの産卵選好性

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要約

ウリ科果菜類では、植物の種類によってトマトハモグリバエ成虫の産卵選好性が異なる。ヘチマやスイカはトマトハモグリバエ成虫に好んで産卵されるが、ニガウリは産卵対象とならない。

  • キーワード:トマトハモグリバエ、ウリ科果菜類、産卵選好性
  • 担当:野菜茶研・果菜研究部・虫害研究室
  • 連絡先:電話059-268-4644、電子メールohtaiz@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜生産環境
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

トマトハモグリバエは、1999年に日本国内で初発生が確認された侵入害虫である。現在、関東以西の広い地域に分布を拡大 しているが、生態的な知見はほとんど得られていない。特に作物の被害程度に密接に関係する寄主選好性は、植物の種類によって大きく異なる可能性がある。そ こで、トマトハモグリバエによる被害が著しいウリ科果菜類について、本種成虫の産卵選好性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 供試したウリ科果菜類は、キュウリ(品種:シャープ-1)、シロウリ(東京大白瓜)、スイカ(縞王マックス)、ズッキーニ (ダイナー)、セイヨウカボチャ(えびす)、トウガン(大長冬瓜)、ニガウリ(太れいし)、ニホンカボチャ(はやと)、ヒョウタン(千成兵丹)、ヘチマ (太へちま)、メロン(プリンスPF)、ユウガオ(大丸かんぴょう)の12種類で、播種後1~1.5ヶ月(本葉3~5枚程度)のポット植え苗である。
  • プラスチック製飼育容器(内寸25×28×30cm)内でトマトハモグリバエ成虫にウリ科果菜類を個別に与える非選択的条件 下での試験では、本種はヘチマに最も多く産卵し、次いでズッキーニ、トウガン、スイカ、セイヨウカボチャ、シロウリ、ニホンカボチャ、キュウリ、ユウガ オ、メロンの順となる。ヒョウタン、ニガウリには産卵しない(図1-(a))。
  • ガラス温室(3×4m)内でトマトハモグリバエ成虫にウリ科果菜12種類を同時に与える選択的条件下での試験では、本種はス イカに最も多く産卵し、次いでヘチマ、シロウリ、ズッキーニ、キュウリ、セイヨウカボチャ、ユウガオ、トウガン、メロン、ニホンカボチャの順となる。ニガ ウリには産卵しない(図1-(b))。
  • トマトハモグリバエ成虫は葉から栄養分を吸汁し、産卵選好性の高い植物では吸汁痕も多く観察される(データ省略)。非選択条件下(図1-(a))で産卵数が少ないメロン等では吸汁痕はほとんど見られないが、選択的条件下(図1-(b))では他の植物上で吸汁できるため、産卵数が増加すると考えられる。
  • 以上の結果から、ウリ科果菜類では、植物の種類によってトマトハモグリバエ成虫の産卵選好性が異なる。ヘチマやスイカなどはトマトハモグリバエ成虫に好んで産卵されるが、ニガウリは産卵対象とならない。

成果の活用面・留意点

  • 同一植物であっても品種や生育段階によって産卵選好性が変化する可能性がある。

具体的データ

図1.ウリ科果菜類に対するトマトハモグリバエ成虫の産卵選好性

その他

  • 研究課題名:ウリ科果菜類におけるトマトハモグリバエの加害特性の解明
  • 課題ID:11-05-03-01-09-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2003年度
  • 研究担当者:太田泉、本多健一郎、河合章