クワシロカイガラムシ抵抗性遺伝子MSR-1を識別するアレル特異性の高いe-RAPD

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要約

開発したe-RAPDにより、クワシロカイガラムシ抵抗性チャ品種'さやまかおり'に由来する抵抗性遺伝子MSR-1の有無を識別することができる。当 DNAマーカーはアレル特異性が極めて高く、'さやまかおり'後代の集団であれば交雑組合せをほとんど選ばず実用的に使用できる。

  • キーワード:チャ、e-RAPD、クワシロカイガラムシ抵抗性、MSR-1、アレル特異性、DNAマーカー
  • 担当:野菜茶研・茶業研究部・育種素材開発チーム
  • 連絡先:電話0993-76-2126、電子メール tanajun@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・茶業
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

クワシロカイガラムシは、薬剤がかかりにくい樹冠内部に生息し防除適期がふ化幼虫時代に限定される等、チャの典型的な難防 除害虫であり、本害虫の防除のため通常の2.5~5倍の薬剤が茶園に散布されている。これは生態系の乱れを引き起こし、新たな病害虫の多発の原因となるば かりか、"クリーンな茶"という強い消費者ニーズに反するものであり、根本的な対応が急がれる。チャ品種'さやまかおり'由来の抵抗性遺伝子MSR-1を 識別できる実用的なDNAマーカーを開発し、チャ育種への応用を図る。

成果の内容・特徴

  • MSRS8Eはクワシロカイガラムシ抵抗性品種'さやまかおり'の抵抗性遺伝子座MSR-1の有無を識別できるe-RAPDである。
  • MSRS8EはOPAX11A(塩基配列:5'-TGATTGCGGGA-3')およびOPAX11TG(塩基配列:5'-TGATTGCGGGTG-3')をプライマーとして図1の条件のPCRより得られる約300塩基長のバンドである(図2)。
  • MSRS8EはMSR-1に相引に連鎖し、'さやまかおり'およびその後代以外の品種・系統からはほとんど検出されない(アレル特異性が高い)。
  • 'さやまかおり'と'金-Ck17'の正逆交雑集団46系統中MSRS8Eが検出される27系統全てが抵抗性強または中、同様にMSRS8Eが検出されない19系統全てが抵抗性弱または中である(表1)。
  • 'さやまかおり'の後代のチャ系統適応性検定試験供試系統中で、抵抗性ありと判断されたすべての系統からMSRS8Eが検出され、抵抗性なしと判断されたすべての系統からはMSRS8Eが検出されない(表2)。

成果の活用面・留意点

  • MSRS8Eは'さやまかおり'のクワシロカイガラムシ抵抗性を対象としたものであり、'みなみさやか'等の抵抗性品種の後代では使用できない。
  • 現在のところ、緑茶用品種の交配母本として有力な素材の中で'さやまかおり'またはその後代でないにもかかわらずMSRS8Eが検出されるのは、'金谷13号'とその後代に限られる。

具体的データ

図1. MSRS8E検出のための標準的なPCR条件

図2. MSRS8EによるDNAマーカー選抜の実施

表1. 'さやまかおり'と'金-Ck17'の正逆交雑集団46系統中のMSRS8Eの有無と抵抗性評価との関係

表2. 'さやまかおり'後代の系統適応性検定試験供試系統のMSRS8Eの有無と抵抗性評価との関係

その他

  • 研究課題名:チャのDNAマーカーの作出と高密度連鎖地図の作成
  • 課題ID:11-06-01-01-05-01
  • 予算区分:交付金、DNAマーカー、所特定
  • 研究期間:2002~2006年度
  • 研究担当者:田中淳一、谷口郁也
  • 発表論文等:田中 (2004) 特願-2004-32806