肥料繰出し量が作業速度に連動する高精度歩行型施肥機

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要約

開発した歩行型施肥機は、肥料繰出し量が作業速度に連動し、単位面積当たり肥料散布量は作業速度の影響を受けない。肥料繰出し機構はロール式を採用し、速度連動機構には多段変速機を備えるため肥料散布量の調節は高精度にできる。

  • キーワード:チャ、歩行型施肥機、速度連動機構
  • 担当:野菜茶研・茶業研究部・作業技術研究室
  • 連絡先:電話0547-45-4654、電子メールdai@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜育種
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

施肥量の削減が求められている中、きめ細かな施肥設計が実践され始めているが、現状の施肥機の肥料散布精度は十分でなく、散布むらが生じるなど施肥設計通りに肥料散布できない上、過剰に肥料が投入されるケースもある。特に、小中規模茶園の施肥作業で利用される歩行型施肥機は、肥料がタンクから自由落下で排出される仕組みで、肥料散布精度は極めて悪いことから、精度の高い歩行型施肥機が求められている。そこで、肥料繰出し量が作業速度に連動して単位面積あたり肥料散布量を一定にできる精度の高い歩行型施肥機を開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発した施肥機は、従来の歩行型手押し式施肥機と同等の機体サイズで、ロール式肥料繰出し機構と速度連動機構を備える(図1)。
  • ロール式肥料繰出し機構は肥料タンク底部に取り付けられ、ゴム製のロールが回転することで肥料を繰出す(図2)。肥料繰出し量はロール回転数と比例関係にあり、正確に調節できる。
  • 速度連動機構は、施肥機の車輪の回転を肥料繰出しロールにチェーンで伝達する。これにより、作業速度が速いときは肥料繰出し量を多く、遅いときは繰出し量を少なくするため、単位面積あたり肥料散布量は作業速度に影響されない(図3)。
  • 繰出し量の設定は、肥料ごとにタンク底部の開口面積を制限し、肥料繰出しロールの有効幅を制限することにより行う。さらに速度連動機構に組み込んだ多段変速機により車輪と繰出しロールの回転伝達比を8段階に切替えることで、肥料散布量の微調整ができる。多段変速機は手元の操作レバーで切替えができ、内部のワンウェイクラッチにより施肥機が前進時のみ肥料を繰出すなど、取り扱い性にも優れる。
  • 茶園で作業速度を変えて繰り返し施肥した場合の散布精度は、単位面積あたり肥料散布量の変動係数が、硫安が3.1%、有機配合肥料が3.6%、菜種油粕が3.2%と非常に小さく、散布量も散布設定値とほぼ一致し、精度は高い(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 有機配合肥料を含む多様な物性の肥料に対応できる。
  • 多段変速機の減速比とロール幅の設定は、減速比・ロール幅・肥料かさ密度の組み合わせからあらかじめ算出した繰出し量一覧表から選択する。
  • 高い肥料散布精度と均一な肥料散布は、きめ細かな施肥設計の実践をサポートする技術となる。
  • 平成17年度に市販予定。

具体的データ

図1 速度連動式歩行型施肥機 図2 肥料繰出し機構

図3 速度連動機構

表1 肥料散布試験結果

その他

  • 研究課題名:可変施肥機及び作業技術の開発
  • 課題ID:11-03-01-01-06-04
  • 予算区分:精密畑作
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:深山大介、荒木琢也、宮崎昌宏、東 邦道(東製作所)
  • 発表論文等:1) 深山ら (2005) 特願2005-003915
    2) 深山ら (2004) 茶業研究報告98(別):34-35