品種識別のためのDNAの簡易、迅速、安価、多検体抽出法

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要約

イチゴ等の野菜、緑茶、冷凍エダマメからグラスファイバーを装着した96ウェルプレートを用いて3時間以内に192検体のDNAが安価に抽出できる。抽出したDNAは品種識別に使用可能である。

  • キーワード:イチゴ、緑茶、DNA抽出、品種識別、グラスファイバー
  • 担当:野菜茶研・機能解析部・遺伝特性研究室
  • 連絡先:電話050-3533-3863、電子メールssmats@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜育種
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

育成者権の保護や偽装表示防止のために、DNAマーカーを用いた品種識別技術が実用化されているが、DNAの抽出については簡易、迅速、安価で多検体の処理が求められている。特にイチゴの葉、ガク、果実のように多糖類が多く含まれている場合、CTAB法など汎用されている方法ではDNA抽出が困難であり、抽出操作やコスト面から改善すべき点が多い。そこでDNAを吸着できるグラスファイバーが付いた96ウェルプレートを用いて、DNA抽出の効率化を図る。

成果の内容・特徴

  • 192(96ウェルプレート2枚分)検体の粉砕からDNA抽出までの所要時間は、3時間以内である(図1、図2)。1検体あたりの抽出に要する試薬コストは約50円であり、市販品の1/5から1/10である。また本抽出法はフェノールやクロロホルムを使用しない。
  • 20~40mgのイチゴ成葉、ガクと100mgのイチゴ果肉から、イチゴの成葉では0.7μg、ガク0.4μg、果肉0.1μg程度のDNAが抽出可能である(表1)。また仕上げ加工した緑茶や調理した冷凍エダマメからもDNAが抽出できる(表1)。
  • イチゴ成葉、ガク、果肉から本方法により抽出したDNAをPCRの鋳型に用いてイチゴ品種識別用DNAマーカーの増幅が可能である(図3)。

成果の活用面・留意点

  • DNA抽出量は、試料の状態、量、粉砕の程度によって大きく異なる。
  • 80%エタノール洗浄後は、96ウェルプレートのウェル内にエタノールが残存しないようにする。
  • 抽出したDNAを長期に保存するときには、エタノール沈殿など再精製を行うことが望ましい。
  • 詳細なマニュアルの作成を行い、ホームページ等で公開予定である。

具体的データ

図1 DNA 抽出操作の流れ 表1 各組織から抽出されたDNA 量
図2 イチゴ成葉から抽出したDNA192 検体 の電気泳動による確認
図3 イチゴ成葉、ガク、果肉から抽 出したDNA を鋳型とした品種 識別用マーカー(APX)の増幅

その他

  • 研究課題名:イチゴDNAの簡易迅速多検体抽出法の開発
  • 課題ID:11-09-04-01-13-04
  • 予算区分:高度化事業(原産地判別)
  • 研究期間:2002~2004年度
  • 研究担当者:松元 哲、國久美由紀、吹野伸子、藤村みゆき
  • 発表論文等:1) 松元ら (2003) 園学雑72別2、251.