ソルガム間作による新植茶園の潮風害防止効果

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要約

台風による潮風害を回避するにはソルガムを各うね間に間作する。2~3うねおきの間作では効果が低い。台風常襲地域の新植茶園では定植後2年目もソルガム間作を続ける必要がある。ソルガム間作は3~5回の台風被害を効果的に防ぐ。

  • キーワード:潮風害、台風、チャ、ソルガム、間作、九州、南西諸島
  • 担当:野菜茶研・茶業研究部・育種素材開発チーム
  • 連絡先:電話0993-76-2127、電子メールokm@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜育種
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

2004年に台風の来襲が相次いだ鹿児島県南部では、深刻な潮風害(傷ついた枝葉に潮が付着し起こる枯死)が大規模に発生し、新植茶園の幼茶樹が多数枯死した。西南暖地や南西諸島では、新植茶園の台風対策としてソルガム間作が行われてきたが、実際の農家圃場では、間作方法が不適切なため甚大な被害を被った事例が少なくない。そこで、2004年に鹿児島県枕崎市と沖縄県名護市で実施した圃場試験から、台風が繰り返し来襲した場合の潮風害および強風害(枝葉の損傷等の物理的被害)の防止効果を明らかにするとともに、効果的なソルガム間作方法を提示し、適切な台風対策の実施を生産者に喚起する。

成果の内容・特徴

  • 台風の強風や潮風による枯死被害を最小限とするには、各うね間にソルガムを間作(1.8m間隔)する必要がある(図1)。2うねおき(3.6m間隔)や3うねおき(5.4m間隔)では、潮風害・強風害の防止効果が大幅に低下する。
  • ソルガムは出穂期頃に高さ60~70cmに刈り揃え、倒伏を防ぐ。乗用型機械の導入産地では、刈り取り回数の少ない短稈品種が省力的である。
  • 定植後2年目の新植茶園では、ソルガム間作がほぼ皆無で、甚大な被害が多く発生している(図2)。2年目もソルガムを間作した名護の事例では、枯死を回避できており(図3)、台風常襲地域の新植茶園では、定植後2年目もソルガム間作を続ける必要がある。
  • ソルガム間作は、潮風害と強風害をともに防ぐ。2004年のように台風が3~5回来襲した場合も被害を顕著に軽減できる(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 隣接した株が互いを支え合うまでの期間は、台風対策が必要なため、成長の遅い茶園では、定植後3年目もソルガム間作が必要となる。
  • 酸性土壌ではソルガムの生育が不良となる。酸性化した改植茶園では、播種前に石灰を散布して土壌pHを5~5.5に矯正すれば、ソルガムの生育が安定する。石灰は播種幅に合わせた条散布とする。
  • うね間だけでなく枕地にもソルガムを植栽し、圃場の四方をソルガムで囲う。乗用型機械を通すためにうね間の中心をずらして、茶樹寄りにソルガムを植栽したり、枕地のソルガムを作業時に機械が踏んでも効果に支障はない。

具体的データ

図1 ソルガムの間作方法とその潮風害・強風害防止効果

図2 潮風害で全滅した定植後2 年目の茶園 図3 ソルガムを間作した定植後2 年目の茶園

図4 ソルガム間作による潮風害と強風害の防止効果

その他

  • 研究課題名:茶新芽不揃いの原因解明と制御技術の開発等による温暖化対応技術の確立
  • 課題ID:11-03-03-01-06-04
  • 予算区分:気候温暖化
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:岡本 毅、吉冨 均、玻名城晋(沖縄農試名護支場)、平松紀士(沖縄農試名護支場)
  • 発表論文等:1) 岡本ら (2004) 茶研報98(別):26-27.