DNAマーカーによるネギ品種識別を可能にする選抜法
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要約
他殖性野菜であるネギは、品種内のDNA多型程度が高く、既存品種ではDNAによる品種識別が不可能である。任意のSSR座について特定の遺伝子型で固定した個体群を選抜し、これらの個体群から品種を育成することにより、他品種との識別が可能となる。
- キーワード:ネギ、SSR座、品種内多型、DNAマーカー、品種識別、他殖性野菜
- 担当:野菜茶研・葉根菜研究部・ユリ科育種研究室
- 連絡先:電話050-3533-3863、電子メールtsuka@affrc.go.jp
- 区分:野菜茶業・野菜育種、作物・生物工学
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
産地や品種の偽装表示の防止および育成者権の保護のため、DNAマーカーによる品種識別技術が有効である。しかし、ネギ(Allium fistulosum)は他殖性であることから、一つの品種のすべての個体が同一の遺伝子型で固定しているわけではない。そこで、ネギ品種内のDNA多型程度を把握した上で、品種識別に有効な育種法を開発する。
成果の内容・特徴
- ネギでは、F1品種といえどもSSR座における品種内多型程度が非常に高く、すべての座が複数の遺伝子型を示す。このため、品種を代表する遺伝子型を特定することは困難であり、DNAマーカーによる品種識別は不可能である(表1)。
- いくつかのSSR座について特定の遺伝子型ホモの個体群を選抜し、その他のSSR座については無理に固定しないことにより、自殖弱勢を避けつつ、品種識別および純度検定が容易な品種を育成できる(品種標識法,図1)。
- ネギ「下仁田」において、2および4 SSR座について特定の遺伝子型でホモの個体群を選抜し、これらのSSR座を固定させた系統を作成しても、原品種の特性をそのまま維持できる(表2)。
成果の活用面・留意点
- SSR座はゲノム中に多数存在しているために、無数の組合せによる品種標識が可能である。
- 連鎖地図を利用することにより、効率良くSSR座を選定することが可能となる。
- ネギと同様な手法で品種育成されている他の他殖性野菜においても、この手法を用いることにより、品種標識することが可能となる。
- 本手法により標識された品種では、複数個体について特定のSSR座の遺伝子型が同一であることにより、他品種との識別が可能となる。したがって、1個体のみによる品種識別はできない。
具体的データ



その他
- 研究課題名:ネギの品種判別法の開発
- 課題ID:11-09-04-01-17-04
- 予算区分:食品
- 研究期間:2003~2004年度
- 研究担当者:塚崎 光、福岡浩之、山下謙一郎、若生忠幸、小島昭夫
- 発表論文等:1) 塚崎ら (2003) 育種学研究5 (別2) :196
2) 塚崎ら (2004) 育種学会中部支部談話会第12回要旨集:14