西日本で新たに発生したトマト葉かび病菌レース

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要約

西日本においても、葉かび病抵抗性遺伝子Cf-4 を持つ品種に感染するトマト葉かび病菌(Fulvia fulva)の4種のレース(レース4、レース4.11、レース2.4、レース2.4.11)が発生している。レース4、レース4.11は日本で、レース2.4、レース2.4.11は西日本で初確認である。

  • キーワード:トマト葉かび病、レース、Fulvia fulva
  • 担当:野菜茶研・果菜研究部・病害研究室、愛媛県病害虫防除所
  • 連絡先:電話050-3533-3863、電子メールmamo@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜生産環境
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

日本のトマト葉かび病菌には、これまでにレース0、レース2、レース2.4およびレース2.4.11の発生が知られている。また、レース2.4およびレース2.4.11は東北・関東および中部地方でのみ分布が見られており、近畿地方以西ではレース0およびレース2の発生のみである。西日本地域では抵抗性遺伝子Cf-4 を持つ品種では、薬剤防除なしに栽培可能であった。ところが、2003年愛媛県で、これまで葉かび病の発生が認められなかった「桃太郎ファイト」(抵抗性遺伝子Cf-4 を持つ)に葉かび病が発生し、農薬散布が必要となり、減農薬栽培体系が崩れている。そこで、安心・安全な農産物生産の一助となるよう、その原因を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 2003年5月、愛媛県で「桃太郎ファイト」に発生が確認された葉かび病は(図1)、4種のレース(レース4、レース4.11、レース2.4およびレース2.4.11)によるものである(表1および2)。これらはいずれも「桃太郎ファイト」のようにCf-4 を持つ品種に感染・発病することができる。
  • レース4およびレース4.11は日本で未確認の新レースであり、レース2.4およびレース2.4.11は三重県以東では既知であるが、西日本では報告がないレースである(表1および2)。

成果の活用面・留意点

  • 従来西日本ではCf-4 を持つ品種では葉かび病の発生は見られず問題はなかったが、今後はCf-4 だけではなくCf-2 あるいはCf-11 を持つ品種の栽培には、葉かび病の発生に注意が必要である。2004年末現在、日本ではCf-5Cf-6 あるいはCf-9 を持つ品種には葉かび病の発生は確認されていない。
  • 当該地域に分布するレースの種類とトマト品種の抵抗性遺伝子を勘案することにより、その地域で抵抗性として利用可能な品種を選択できる。
  • これまで存在しなかったレースが発見されたことから、他地域においてもこのようなレースの構成が変化している可能性がある。

具体的データ

図1 トマト葉かび病の病徴と病原菌

表1 葉かび病菌のレースと品種の反応および検定結果

表2 愛媛県の「桃太郎ファイト」から分離されたレースおよびその菌株数の内訳

その他

  • 研究課題名:ミニトマトの葉かび病に対する抵抗性
  • 課題ID:11-05-02-01-18-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2004~2005年度
  • 研究担当者:佐藤 衛、篠崎 毅(愛媛県病害虫防除所)、西 和文、窪田昌春