ダイアレル分析によるチャ炭疽病抵抗性の遺伝解析
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要約
チャ炭疽病抵抗性は、ほとんど遺伝子の相加効果によって決まり、優性効果は極小さい。遺伝率は、広義、狭義ともに高く、環境による変動は極めて小さい。正逆交配間で差異は認められない。エピスタシスの存在は認められない。
- キーワード:チャ、炭疽病、病害抵抗性、ダイアレル分析
- 担当:野菜茶研・機能解析部・茶生理遺伝研究室
- 連絡先:電話0547-45-4480、電子メールnamiko@affrc.go.jp
- 区分:野菜茶業・茶業
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
チャ炭疽病は、我が国の茶栽培における最重要病害である。主要品種である「やぶきた」は本病に対して抵抗性が弱く、抵抗性品種の育成が望まれている。抵抗性品種の育成を着実に行うためには、炭疽病抵抗性の遺伝様式を明らかにすることが必要である。
成果の内容・特徴
- チャ炭疽病抵抗性はF1世代でばらつきが見られるが(図1)、Wr(非系列分散)のVr(系列分散)に対する回帰係数は1に近似しており、ホモ接合性は完全ではないが高く、ダイアレル分析は適用できる。また、相加効果が優性効果に比べて極めて大きく、抵抗性に関する遺伝子がヘテロ接合である親が一部存在していたとしても、ダイアレル分析に与える影響は少ない。
- ダイアレル分析によって推定した各遺伝成分は、相加効果D に比べて、優性効果H 1、H 2、環境分散E、平均優性度を表す(H 1/D)1/2は小さいことから(表1、2)、チャ炭疽病抵抗性はほとんど相加効果によって決まり、優性効果と環境変動は極小さい。
- ダイアレル分析における遺伝率は、広義で0.947、狭義で0.943と極めて高い(表2)。
- c、d 項は有意でなく、正逆交配間差は認められない(表1)。
- Wr のVr に対する回帰係数は1に近く、エピスタシス(非対立遺伝子間交互作用)は認められない(図2)。
成果の活用面・留意点
- F1世代で抵抗性強の個体を効率よく得るためには、片親は抵抗性強、もう一方の親は抵抗性中以上の系統を用いる必要がある。
- ダイアレル分析には、コンピュータープログラムDIAL98(鵜飼2002)を使用した。
- 抵抗性の異なるチャ5品種、「さやまかおり」、「やぶきた」、「Z1」、「ふじみどり」、「やまとみどり」の結果であり、アッサム変種の炭疽病抵抗性については、中国変種と異なる抵抗性機構が存在する可能性がある。
具体的データ
その他
- 研究課題名:統計的手法によるチャ炭疽病抵抗性の遺伝解析
- 課題ID:11-03-03-01-10-04
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2004年度
- 研究担当者:池田奈実子
- 発表論文等:1) 池田・安間(2004) 育種学研究 6:135-141