クワシロカイガラムシ孵化盛期調査のための微小昆虫捕獲装置と画像処理計数法

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要約

乾電池で駆動するファンとカートリッジ式粘着シートを組合せた微小昆虫捕獲装置は、捕獲効率が高く取り扱いが容易なため、クワシロ カイガラムシ孵化幼虫の発生消長を簡便に調査できる。捕獲虫数を自動計数する画像処理ソフトを併用すると、孵化盛期の把握調査をより省力的に行うことができる。

  • キーワード:クワシロカイガラムシ、微小昆虫捕獲装置、画像処理、自動計数、発生予察、チャ害虫
  • 担当:野菜茶研・茶業研究部・虫害研究室
  • 連絡先:電話0547-45-4693、電子メールlucifer@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・茶業
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

チャの難防除害虫クワシロカイガラムシの防除では、防除適期の基準となる孵化盛期の把握が重要である。現在、孵化盛期調査法として 茶株内に設置した粘着トラップ(両面粘着)で幼虫の捕獲消長を調べる方法が普及しているが、粘着トラップの取り扱いや捕獲虫数の調査に熟練と労力を要する 等の欠点がある。そこで、誰もが手軽に行えて省力的で簡便なモニタリング法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 微小昆虫捕獲装置は、モータで回転させた軸流ファンで微小昆虫を吸引し、後方に取り付けたカートリッジ式の粘着シートで捕獲する装置である(図1)。本装置を茶株内に設置すると、孵化直後のクワシロカイガラムシ幼虫等が効率的に吸引・捕獲される。
  • カートリッジ式粘着シートは、35mmスライドマウントに透明粘着シートを挟んだものである。従来の株内粘着トラップに比べ取り扱いが容易であるほか、トラップ交換時における対象害虫等の生息部位の攪乱を最小限に抑えることができる。
  • カートリッジ式粘着シートは、回収後にそのまま検鏡・調査することができる。また、市販のフラットスキャナで画像を取り込み(図2)、拡大画像をパソコン等に表示して調査することもできる。
  • 画像処理計数ソフトで、クワシロカイガラムシ孵化幼虫の自動計数が可能である。これは、取込み画像から輝度、彩度、色相、面積、円形度等の閾値を使って対象虫を抽出し、自動計数するソフトである(図2)。本ソフトによる自動計数値は、捕獲虫数が多くなると過少評価される傾向があるが、捕獲ピークの把握に問題はない(図3)。
  • 本装置によるクワシロカイガラムシ孵化幼虫の捕獲数は株内粘着トラップと同程度である。また、本装置による捕獲消長は株内粘着トラップによるものとほぼ等しく(図4)、防除適期決定の基準となる捕獲最盛日もほとんど差がない。

成果の活用面・留意点

  • 防除適期の把握調査には、粘着シートを毎日交換することが望ましい。調査開始日は有効積算温度による発生予察情報(JPP-NET等)で決定することができる。なお、本装置は単1形乾電池2本で3週間安定稼動する。
  • 画像処理自動計数ソフトの閾値を調整することにより、取り込み形式の異なるフラットスキャナ画像の自動計数が行える。
  • 微小昆虫捕獲装置および画像処理自動計数ソフトは、平成18年度に市販化予定である。

具体的データ

図1.微小昆虫捕獲装置

図2.画像処理自動計数例

図3.画像処理計数法の計数精度

図4.開発した微小昆虫捕獲装置によるクワシロカイガラムシ孵化幼虫の捕獲消長調査例

その他

  • 研究課題名:画像処理と性フェロモン等を用いたクワシロカイガラムシ、新芽加害性害虫の発生予察と被害予測による茶害虫管理技術の開発
  • 課題ID:11-06-02-01-25-05
  • 予算区分:生物機能
  • 研究期間:2003?2005年度
  • 研究担当者:佐藤安志、武田光能、小倉紀人、深山大介、大泰司誠、石島力、荒木琢也、宮崎昌宏、井村裕朗(株式会社寺田製作所)、影山 淳(株式会社寺田製作所)
  • 発表論文等:武田ら(2004)特許出願2004-053067(特許公開2005-237317)