湿害によるトマト根の壊死の可視化

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要約

湛水処理するとトマトの根は先端部分より基部にかけて徐々に壊死する。エバンスブルー溶液により壊死した部分は青く染色され、生きている白い部分と区別できる。画像ソフトウェアにより画像処理することで壊死した部分が数値化できる。

  • キーワード:エバンスブルー、画像処理、湿害、トマト、根
  • 担当:野菜茶研・果菜研究部・生育特性研究室、栽培システム研究室、作業技術研究室
  • 連絡先:電話0569-72-1596、電子メールskatsumi@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜栽培生理
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

転換畑水田での野菜栽培や夏季高温下での養液栽培などでは、根の湿害が大きな問題となっている。しかし、湿害の程度を定量化することは難しく有効な手法がない。そこで、トマトを用い根の壊死を組織化学的に可視化することで、障害程度の評価に資する。

成果の内容・特徴

  • 湛水処理した障害発生初期の根を肉眼で判別することは不可能である(図1a)。生きている細胞を染めるFluorescein Diacetate溶液(FDA)、死んだ細胞を染めるPropidium iodide溶液(PI)で染色し蛍光顕微鏡で観察することで判別が可能であるが(図1b、c)、エバンスブルー溶液による染色(0.1%水溶液に10分程度浸染し、その後流水で洗浄する)がより簡易に根の壊死を可視化でき、肉眼や実体顕微鏡で判断できる(図1d)。
  • エアレーションした根はエバンスブルーで染まらないが(図2a)、湛水処理すると根の先端部分が染色し(図2b)、時間の経過に伴い染色部分は根の基部へと拡大する。(図2c)。
  • 壊死した部分の全体の根量に占める割合は画像解析により数値化できる。イメージスキャナの上においたアクリルバット に水を入れて染色した根を広げ、背景を赤色としてスキャンしたデジタル画像をパソコンに取り込む。その後、画像処理ソフトウェアで領域を識別し、白色部と 染色部の面積比率を求める(図3、表1)。

成果の活用面・留意点

  • トマト以外の作物でも根の壊死を判断し、湿害程度を評価する場合に利用できる。
  • 画像処理ソフトウェアはRGB三原色の輝度にしきい値を設けて背景、白色部、染色部を識別し画素数をカウントするものが利用できる。
  • エバンスブルーは細胞膜の選択透過性が失われると細胞内へ流入する染色剤であり、細胞の生死判別に用いられる試薬である。
  • 湿害以外の要因(乾燥・塩害等)で根が壊死する場合でも本手法により根の生死は可視化できる。

具体的データ

図1
a:湛水処理したトマト
b:FDA染色
c:PI染色
d:エバンスブルー染色

図2 エバンスブルー染色による湿害の可視化

図3 スキャナーで取り込んだエバン
スブルー染色した根の画像(a)と処理画像(b)

表1 画像処理ソフトウェアによる解析結果

その他

  • 研究課題名:果菜類の根における酸素不足による障害発生機構の組織学的解明
  • 課題ID:11-02-02-01-26-05
  • 予算区分:交付金(所特定)
  • 研究期間:2004?2005年度
  • 研究担当者:鈴木克己、黒崎秀仁、河崎靖、中野有加、高市益行