焙じ茶に含まれるアクリルアミド含量の分析方法とその生成要因

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要約

焙じ茶に含まれるアクリルアミド含量は、茶葉を温度180℃で10分焙煎した時に最高になる。また、焙煎後のアクリルアミド含量は、焙煎前の原料茶葉のアスパラギン含量の影響を強く受ける。

  • キーワード:アクリルアミド、分析法、焙じ茶、焙煎、アスパラギン
  • 担当:野菜茶研・茶業研究部・製茶システム研究室、機能解析部・茶品質化学研究室
  • 連絡先:電話0547-45-4950、電子メールmyuzo@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・茶業
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

アクリルアミドは国際がん研究機関により、発がん分類で2A(ヒトに対して恐らく発ガン性がある物質)に分類されており、ポテト チップやフライドポテト、パン、クッキー、朝食用シリアル、コーヒーなど高温で加熱して製造された様々な食材に含まれていることが報告されている。各種茶 類の中でも焙じ茶はコーヒー並のアクリルアミドを含有するが、その生成要因は明らかにされていない。また、茶葉には高含量のポリフェノール類が含まれてお り、GC-MSを用いた分析過程において、アクリルアミドの臭素化の阻害要因となる。そこで、茶葉に含まれるアクリルアミドの分析方法を確立し、その生成 要因を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 茶葉に含まれるアクリルアミドは、粉砕した茶葉試料に内部標準の13C3-アクリルアミドを添加後、水で抽出し、C18・陽陰イオン交換混合相固相抽出により精製後、臭素化しGC-MS法で分析する(図1)。
  • 固相抽出カートリッジに抽出液を通過させると、5番目以降のフラクションにエピガロカテキンが含まれる(図1)。エ ピガロカテキンなどのポリフェノール類はアクリルアミドの臭素化を阻害するため、エピガロカテキンを含まない2∼4番目のフラクションを分取して分析に供 する。
  • アクリルアミドが最も多く検出された条件は、180℃で10分焙煎した時であり(図2)、繰り返し焙煎操作した場合の変動係数は24%以内である。
  • 品種及び摘採日が異なる60サンプルの荒茶100gをそれぞれアルミ皿にのせ、180℃で10分焙煎した場合、アク リルアミドは125ppbから575ppbの範囲で生成する(変動係数は16%以内)。この時、アスパラギンは茶葉中のアクリルアミドの生成に最も強く関 与する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • アクリルアミド含量は、2004年4月下旬から7月上旬に野菜茶業研究所(金谷)で製造された荒茶を用いた場合の値である。
  • 各アミノ酸と糖の分散比は、重回帰分析で得られた式の係数を二乗し、その分散で除した値である(図3)。これはアクリルアミド生成量に対する影響度を示す。

具体的データ

図1 茶葉に含まれるアクリルアミドの分析方法

 

図2 焙煎温度と焙煎時間が茶葉中のアクリルアミドの生成に及ぼす影響

 

図3 アクリルアミド生成量に対する各種アミノ酸と糖の影響度の大小

 

その他

  • 研究課題名:茶及びその浸出液におけるアクリルアミド含有量の把握と低減化技術の開発
  • 課題ID:11-08-02-01-07-05
  • 予算区分:食品
  • 研究期間:2003∼2004年度
  • 研究担当者:水上裕造、林宣之、山口優一、小野裕嗣(食総研)、忠田吉弘(消費技セ)、箭田浩士(食総研)、吉田 充(食総研)