ペクチン/ガレート型カテキン複合体の形成による渋味抑制効果

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要約

ガレート型カテキンの渋味は、ペクチンとの複合体形成により抑制される。一方で、非ガレート型カテキンは、ペクチンとの複合体形成が困難であるため、その渋味はほとんど抑制されない。

  • キーワード:ガレート型カテキン、ペクチン、複合体、渋味抑制、味覚センサー、1H-NMR
  • 担当:野菜茶研・機能解析部・茶品質化学研究室
  • 連絡先:電話0547-45-4982、電子メールhayn@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・茶業
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

柿ポリフェノールの渋味がペクチンとの複合体形成によって抑制されることが知られている。また、同様の渋味抑制効果は緑茶のポリ フェノール(カテキン類)においても確認されているが、そのメカニズムは明らかになっていない。そこで本研究では、味覚センサーと1H-NMRを使用し て、カテキン類の構造と渋味抑制効果の関係を解明する。

成果の内容・特徴

  • 緑茶の主要4 カテキン(エピガロカテキンガレート=EGCg、エピカテキンガレート=ECg、エピガロカテキン=EGC、エピカテキン=EC)の各水溶液にペクチンを 添加すると、味覚センサー(INSENT社製、SA402Bモデル)の出力はガレート型カテキン(EGCgとECg)の渋味が抑制されることを示す(図1)。
  • EGCg、ECg、EGC、ECの各水溶液にペクチンを添加した場合、ガレート型カテキンの1H-NMRスペクトルにおける化学シフトの変化量は、非ガレート型カテキン(EGCとEC)のものよりも大きい(図2)。この結果は、ガレート型カテキンがペクチンと複合体を形成することを示す。
  • ペクチンの水溶液にEGCg、ECg、EGC、ECを添加すると、ガレート型カテキンを添加した場合のペクチンの1H-NMRスペクトルにおける化学シフトの変化量は、非ガレート型カテキンを添加した場合に比べて大きい(図3の矢印部分)。この結果は、複合体の形成に関して上記2の内容を裏付ける。
  • ペクチンはガレート型カテキンと複合体を形成することにより渋味を抑制する。一方で、非ガレート型カテキンはペクチンとの複合体形成が困難であるため、その渋味はほとんど抑制されない。

成果の活用面・留意点

  • 味覚センサー実験に使用したカテキン類とペクチンの濃度は、それぞれ0.218 mmol/L、0.1 mg/mLである。
  • NMR実験に使用したカテキン類とペクチンの濃度は、それぞれ4.96 mmol/L、2.27 mg/mLである。
  • 使用したペクチンは、市販のカンキツ由来のものである。

具体的データ

図1 味覚センサーによる各カテキン水溶液の応答出力(?E/mV) 灰色:カテキンのみ,赤色:カテキン+ペクチン

図2 ペクチンを添加した場合の各カテキンの1H-NMRスペクトルにおける化学シフト変化

図3 各カテキンを添加した場合のペクチンの1H-NMRスペクトルにおける化学シフト変化

その他

  • 研究課題名:センサー等を用いた茶の味評価法の開発
  • 課題ID:11-10-04-01-12-05
  • 予算区分:品質評価法
  • 研究期間:2004?2005年度
  • 研究担当者:林 宣之、氏原ともみ、木幡勝則
  • 発表論文等:Hayashi et al. (2005) Biosci. Biotechnol. Biochem. 69: 1306-1310.