温度に依存しないうどんこ病抵抗性を有する「きゅうり中間母本農5号」(旧系統名 キュウリ久安1号)
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要約
「きゅうり中間母本農5号」は、温度条件にかかわらず安定したうどんこ病抵抗性を有する系統で、キュウリのうどんこ病抵抗性品種育成のための素材として利用できる。
- キーワード:キュウリ、うどんこ病抵抗性、温度非依存型、病害抵抗性育種
- 担当:野菜茶研・野菜育種研究チーム
- 連絡先:電話050-3533-3863 、電子メールysakata@affrc.go.jp
- 区分:野菜茶業・野菜育種
- 分類:研究・普及
背景・ねらい
キュウリのハウス栽培において、春先および秋に多発・蔓延するうどんこ病の被害は深刻である。そこで、高温域(26℃程度)、あるいは低温域(20℃程度)のいずれの条件においても安定したうどんこ病抵抗性(温度非依存型うどんこ病抵抗性)を示すインドの雑草キュウリ「CS-PMR1」を抵抗性素材として、秋から春にかけての低温期においても安定したうどんこ病抵抗性を有するきゅうり中間母本を育成する。
成果の内容・特徴
- 「きゅうり中間母本農5号」は、インドの雑草キュウリ「CS-PMR1」(温度非依存型うどんこ病抵抗性)に、わが国のハウス栽培用品種「シャープ1」(埼玉原種育成会(株);うどんこ病罹病性)およびオランダの品種「Rira」(Enza Zaden Co.;高温域だけで抵抗性(高温型うどんこ病抵抗性))を交雑し、選抜を繰り返して育成した固定系統である(図1、図2)。
- 市販品種の「シャープ1」、「フリーダムハウス2号」などに比べ、高温域(26℃)、低温域(20℃)の両条件で十分な抵抗性を示す(表1)。
- 「きゅうり中間母本農5号」の温度非依存型うどんこ病抵抗性は、基本となる上位の劣性遺伝子の他に、もう1対の下位の劣性遺伝子が関与していると推察される(表2)。
成果の活用面・留意点
- キュウリのうどんこ病抵抗性向上のための母本として利用できる。
- 一般のキュウリ品種に比べ果実が短い(約11cm)ことから、果実の長いキュウリを交雑することにより果実の形状を改良することが必要である。
- 低温域(20℃)でうどんこ病抵抗性個体の選抜を行うことにより、高温域・低温域ともに抵抗性を示す温度非依存型抵抗性個体の選抜ができる。
- 「きゅうり中間母本農5号」の温度非依存型うどんこ病抵抗性は、上位・下位の2対の劣性遺伝子が関与していると推察されることから、交雑後代において抵抗性個体の出現頻度は低いと予想される。そのため、選抜に際しては十分な個体数を扱うことが必要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:病虫害抵抗性、省力・機械化適性、良食味等を有する野菜品種の育成
- 課題ID:211-j
- 予算区分:基盤研究費
- 研究期間:1997~2006年度
- 研究担当者:坂田好輝、森下昌三、北谷恵美、杉山充啓、小原隆由、杉山慶太、小島昭夫
- 発表論文等:森下ら(2002)園学雑71:94-100.