高精度で再現性の高いイチゴの品種同定技術
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要約
イチゴ品種同定用に開発したDNAマーカーを利用して、国内を中心とするイチゴ117品種を約99.9%の精度で同定できる。本分析技術は、マニュアルに従って実施することにより、実施機関や分析者が異なっても極めて高い再現性を有する。
- キーワード:イチゴ、DNAマーカー、多型頻度、品種同定、研究室間共同試験
- 担当:野菜茶研・野菜ゲノム研究チーム(兼:品種識別・産地判別研究チーム)
- 連絡先:電話 050-3533-3863、電子メール miyuky@affrc.go.jp
- 区分:野菜茶業・野菜育種
- 分類:行政・普及
背景・ねらい
最近、イチゴ品種がブランド化しており、育成者権の侵害や店頭での品種偽装表示が問題となり、一部係争にもなった。そのため、品種同定法には高い客観性と再現性が求められている。しかし従来の外観による品種同定法では、同定の精度を数値化したり再現性を証明するのは困難である。そこで、国内の流通品種や登録品種を客観的に同定できるDNAマーカーを開発するとともに、本法の再現性を確認し、汎用性ある品種同定技術とする。
成果の内容・特徴
- 開発したイチゴ品種同定用の25マーカーは、アガロースゲル電気泳動による検出が可能であり、ゲノム特異的なマーカーを用いることにより、高次倍数性のイチゴであっても明瞭な多型パターンが得られる(図1)。
- 国内流通品種の大部分を網羅する125品種の多型調査では、突然変異による5品種がそれぞれの親品種と区別できないが、その他の117品種は全て同定可能である(表1)。
- 多型頻度に基づいて各品種の同定精度を算出すると、開発した25マーカーのうち16マーカーを用いることにより、突然変異による品種およびその親品種を除く、国内を中心とする117品種の同定精度はほぼ99.9%となる(表2)。
- 本分析技術のマニュアルに従った12研究機関での研究室間共同試験では、24マーカーについて感度、特異性ともに95%以上(平均99.8%)の高い再現性が得られた(表3)。
成果の活用面・留意点
- 分析は、①イチゴサンプルからのDNA抽出 ②PCR法によるDNAマーカー領域の増幅 ③制限酵素処理 ④電気泳動による多型の検出 の4ステップから成る。
- 所要時間は192分析(例:12サンプル×16マーカー、192サンプル×1マーカー)で8時間程度である。
- 同定精度は、表1の125品種を対象として算出した多型頻度に基づいているため、今後、対象となる品種が入れ替わった場合は多少の変動が起こる可能性がある。
- 本法によるイチゴの品種同定法は、既に日本食品分析センターおよびビジョンバイオ株式会社に許諾され、実施されている。
具体的データ




その他
- 研究課題名:農産物や加工食品の簡易・迅速な品種識別・産地判別技術の開発
- 課題ID:324-a
- 予算区分:食品
- 研究期間:2003~2006年度
- 研究担当者:國久美由紀、松元哲、上田浩史、吹野伸子
- 発表論文等:1) Kunihisa et al. (2003) Euphytica 134(2), 209-215.
2) Kunihisa et al. (2005) Theor. Appl. Genet. 110, 1410-1418.
3) 國久ら 平成14年度野菜茶業研究成果情報、11-12.
4) 國久ら 特願2003-第337714号