根の嫌気処理による野菜の迅速・簡便な湛水害耐性評価法

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要約

採取した野菜の根を洗浄し、細断した後、窒素ガスを使って嫌気処理する。その時に生成するアセトアルデヒドおよびエチルアルコール量を測定することで、野菜の湛水害耐性を迅速・簡便に評価できる。

  • キーワード:嫌気処理、湛水害、アセトアルデヒド、エチルアルコール
  • 担当:野茶研・業務用野菜研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-8529、電子メールhigashio@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜栽培生理
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

露地野菜の安定生産のために、台風・長雨等による降雨災害を軽減する技術開発が求められ、湿害に強い野菜の品目あるいは品種選定が進められている。その場合、耐湿性を評価する方法として湛水処理が行われているが、一定期間の湛水処理が必要で有る上に、かつ多検体を取り扱う事は難しい。一方、野菜の湛水害については、根域部の低酸素化が発生の主因と考えられている。そこで、作物体より採取した根を人為的に嫌気処理し、生成するアセトアルデヒドおよびエチルアルコール量を測定することで、湛水害に対する野菜の耐性を迅速・簡便に評価する方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 考案した方法は図1のように湛水処理の代わりに、窒素ガスを使って根域の嫌気条件を作出し、生成するアセトアルデヒドおよびエチルアルコール含量を測定することで湛水に対する耐性の相違を評価する。
  • リーフレタスの根3gを入れた100mlの三角フラスコの場合、加湿した窒素ガスを400~700μl/minの流速で2分程度通気することで酸素濃度が0.2%の嫌気条件を簡単に作出することができる(図1)。
  • 嫌気処理した根からのアセトアルデヒド・エチルアルコールの生成量は60分を過ぎると、生成速度に差が現れる(図2)。また、両物質の生成は温度依存性であるが、30℃以上になると測定誤差が大きくなり、生成量の減少することがある(図3)。
  • 5日間の湛水処理で根重低下が大きく、湛水害耐性が劣る野菜の根は嫌気処理した時に生成するアセトアルデヒトやエチルアルコールの量が多い(図4)。
  • 1/5000ワグネルポット栽培し、5日間湛水処理し、処理前後における根乾物重の減少程度から湛水害抵抗性を評価する方法と比べて、極めて短時間(数時間)に評価することができる。

成果の活用面・留意点

  • 洗い出した根は速やかに、調製し、検査に供する。
  • 湛水に強い野菜品目の選定への利用が期待される。
  • 供試した野菜の品種はいずれも1種類である。

具体的データ

図1 考案した湛水害耐性評価法

図3 嫌気処理に伴うアセトアルデヒドおよびエチルアルコールの生成能と処理温度との関係

図2 嫌気処理に伴いリーフレタス根から生成されるアセトアルデヒド・エチルアルコール量の経時変化

図4 嫌気処理した根より生成するアセトアルデヒドおよびエチルアルコール量と湛水処理時における根乾物重の減少程度との関係

その他

  • 研究課題名:キャベツ、ねぎ、レタス等の業務用需要に対応する低コスト・安定生産技術の開発
  • 課題ID:211-h
  • 予算区分:高度化事業(降雨リスク低減)
  • 研究期間:2005~2006年度
  • 研究担当者:東尾久雄、相澤証子、村上健二、徳田進一、浦上敦子