キャピラリー電気泳動法を用いた野菜呈味成分・硝酸の低コスト分析法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

キャピラリー電気泳動法を用いることにより、野菜の甘味に関係する糖類や、酸味・えぐ味に関係する有機酸、及び安全性の面から蓄積が懸念される硝酸を簡便で安価に分析できる。

  • キーワード:有機酸、糖、呈味成分、硝酸、品質評価、食味、低コスト
  • 担当:野菜茶研・野菜・茶の食味食感・安全性研究チーム
  • 連絡先:電話050-3533-3863、電子メールhorie@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜品質・機能性
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

野菜のおいしさを解明する上で、簡便な成分分析法の開発が必須である。野菜の甘味には果糖、ブドウ糖、ショ糖などの糖が、酸味・えぐ味にはクエン酸、シュウ酸などの有機酸が関与する。一方、安全性の面からは野菜への硝酸の蓄積が懸念されている。これらの成分については、高速液体クロマトグラフィーなどの方法で分析可能ではあるが、特殊な分析用カラムや検出装置、あるいは煩雑な試料の前処理を必要とする。そこで、これらの成分について簡便で安価に分析できる方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本成果は、キャピラリー管の両端に電圧をかけて成分を分離するキャピラリー電気泳動法に基づくものである。野菜中の硝酸・有機酸及び遊離糖をそれぞれの条件で分離し、紫外部吸収を有する電気泳動液を用いて、間接的に吸光度検出する。
  • 野菜中の硝酸及び主要な有機酸であるシュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸の同時分析が可能である(図1)。本法では、分析に要する時間はキャピラリー管の洗浄等に要する時間を含めても1試料あたり15分であり、他の分析法よりも迅速である。
  • 野菜中の果糖、ブドウ糖、ショ糖の同時分析が可能である(図2)。分析に要する時間は、キャピラリー管の洗浄等に要する時間を含めても、1試料あたり20分と、高速液体クロマトグラフ法と同等である。
  • 図1及び図2の方法では共通のキャピラリー管を用いているので、同一試料について糖と有機酸・硝酸を連続分析することも可能である。
  • 少量のメタノールを除き有機溶媒や毒劇物は使用しないので、取り扱いが容易であり、電気泳動用の試薬(50試料分で100円以下)やキャピラリー管(1本あたり3,000円程度で数百点使用可)が安価なため、低コストで分析可能である。

成果の活用面・留意点

  • 1試料の測定毎に、希酸、希アルカリ等でキャピラリー管を洗浄することにより、泳動時間の再現性が向上する。
  • 図1及び図2は油炒めした試料の分析例である。野菜の水抽出液を除粒子するだけでそのまま分析できるので、本法は調理による成分変化等の研究にも応用できる。ただし、生の野菜を試料とする場合には、内生酵素の作用により成分組成が変化する場合があるため、抽出前に電子レンジなどで短時間加熱処理することが望ましい。
  • 糖分析においてフラクトオリゴ糖はショ糖の直前に泳動される。フラクトオリゴ糖を多く含むネギ等への適用の場合、フラクトオリゴ糖とショ糖との分離が不十分な場合がある。

具体的データ

図1 油炒めしたホウレンソウ抽出液中の硝酸及び有機酸の分析

図2 油炒めしたホウレンソウ抽出液中の糖の分析

その他

  • 研究課題名:野菜・茶の食味食感評価法の高度化と高品質流通技術の開発
  • 課題ID:311-g
  • 予算区分:品質評価法
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:堀江秀樹、伊藤秀和
  • 発表論文等:堀江ら(2005)園学研 4: 95-98.
    堀江・伊藤(2006)野茶研報 5: 1-6.
    野菜茶業研究所ホームページ[PDFファイル]