集団茶園地域の周辺水系に見られる硝酸性窒素濃度の変化

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要約

集団化した茶園が広がる静岡県牧之原台地周辺地域における過去10年間の水質調査の結果、硝酸性窒素濃度に減少傾向が見られる。その程度は、茶園周囲の排水路や湧水で大きく、小河川では小さい。

  • キーワード:茶園、水質、硝酸性窒素、トレンド解析、窒素施肥、施肥削減
  • 担当:野菜茶研・茶施肥削減技術研究チーム
  • 連絡先:電話0547-45-4924、電子メールhirono@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・茶業、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

集団化した茶園の広がる地域周辺の水系では、しばしば高濃度の硝酸性窒素が検出されるようになり、近年、茶園への窒素施肥量の削減が進められてきたことから、施肥量の削減により、周辺水系に見られる硝酸性窒素濃度の減少効果についての営農者や行政の関心は高い。そこで、静岡県牧之原台地周辺の地下水、湧水、排水路、小河川等の硝酸性窒素濃度の観測データを用いて、施肥量の削減が進められてから、台地周辺水系に見られる硝酸性窒素濃度の変化の傾向(トレンド)を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 硝酸性窒素濃度の変化の検証には、静岡県牧之原台地周辺(図1)における1996年1月から2005年12月までの10年間の毎月1回の水質調査の結果を用いる(ただし、湧水1、2については1999年8月から調査開始)。トレンドの符号の検定にはノンパラメトリック検定法であるSeasonal Mann-Kendall法を用いる。また、直線回帰の傾きをトレンドの指標とする。
  • トレンド解析の結果、台地北部・中部の地点では硝酸性窒素濃度の有意な減少傾向が見られる(表1)。特に、排水路や湧水において減少の程度が大きい。しかし南部では、有意な減少傾向は見られず、上昇傾向が認められる地点もある(図2)。
  • アンケート調査の結果、本調査対象地域周辺の茶園における窒素施肥量は減少傾向にある(図3)。また、調査期間中における本対象地域の茶園面積に大きな変化は見られない。
  • 本対象地域の主な窒素排出源は茶園と考えられ、周辺の茶園面積や月降水量に大きな変化は見られないことから、硝酸性窒素濃度の減少傾向は、茶園への窒素施肥量が削減されてきた効果であると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • ここで求めたトレンドは、過去10年間のもので、今後の変化を予測するものではない。本対象地域では水質が改善されている傾向が見られるものの、その程度は徐々に小さくなっている。
  • 地域の地形や気象によって、窒素施肥量の削減が周辺水系の水質変化に及ぼす影響は異なる。

具体的データ

図1 牧之原台地周辺の地形と水質調査地点

図2 硝酸性窒素濃度の変化

表1 硝酸性窒素濃度のトレンド解析結果

図3 現場での窒素施肥量の推移(アンケート調査の結果)

その他

  • 研究課題名:茶の効率的施肥技術の開発及び少肥適応性品種との組み合わせによる窒素施肥削減技術の開発
  • 課題ID:214-m
  • 予算区分:基盤研究費、自然循環
  • 研究期間:1995~2006年度
  • 研究担当者:廣野祐平、渡部育夫、野中邦彦