重イオンビーム照射当代に見出されたピーマン劣性ホモ突然変異

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

ピーマン乾燥種子への重イオンビーム照射当代植物群より得られた2個体の短節間変異体、1個体の黄化変異体の形質は処理当代で固定している。これらの変異はいずれも核支配の一遺伝子劣性遺伝を示す。

  • キーワード:ピーマン、重イオンビーム、短節間、黄化、劣性遺伝、接ぎ木、突然変異
  • 担当:野菜茶研・野菜ゲノム研究チーム
  • 区分:野菜茶業・野菜育種
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

サイクロトロンなどで加速した重イオンビームを植物に照射し、変異体を得る試みが多くの植物種で行われており、花きでは実用品種 も育成されている。野菜では本法の適用例が少ないため、ピーマンを材料として野菜における本法の有効性を検証するとともに、得られた変異体の特性を明らか にする。

成果の内容・特徴

  • ピーマン(品種「カリフォルニアワンダー」)乾燥種子への135MeV/uの加速炭素、ネオンイオン照射において、30Gy(グレイ)以上の照射では、照射個体の生育阻害が顕著である(図1)。
  • ネオンイオン10Gy照射群当代105個体より2個体の短節間変異体、1個体の葉および果実が黄化した変異体を単離した。両短節間個体の次世代の草丈には分離が見られず(図2A)、黄化個体の次世代もすべて黄化性である。すなわち、これらの形質は処理当代で遺伝的に固定している。
  • 短節間系統、黄化系統のいずれにおいても、親系統と交配F1植物の形質は親系統と同じである(図2B;黄化系統については省略)。またF2、BC1F1における変異体出現比率は、変異が劣性一遺伝子支配と仮定した場合に想定される値(F2において0.25、BC1F1において0.5)に適合する。すなわち、これらの突然変異は核支配の一遺伝子劣性変異である(表1)。
  • 短節間系統の短節間性に接ぎ木移行性はなく、矮性台木としての利用はできない(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 処理当代では変異の認められない個体から得られた後代からも変異体は出現する。すなわち、劣性ヘテロ突然変異も重イオンビーム処理により誘発される。

具体的データ

図1 ピーマンにおけるイオンビームの正常生育率に及ぼす影響図2 得られた短節間個体の特徴

表1 変異の遺伝解析図3 短節間系統と親系統との接ぎ木個体の草丈

その他

  • 研究課題名:野菜におけるDNAマーカー整備及び遺伝子機能解明と利用技術の開発
  • 課題ID:221-i
  • 予算区分:委託プロ(原子力)
  • 研究期間:2004~2007年度
  • 研究担当者:本多一郎、菊地郁、松尾哲、福田真知子、阿部知子(理研)、福西暢尚(理研)、斉藤宏之(理研)、龍頭啓充(理研)
  • 発表論文等:Honda I. et al. (2006) Euphytica 152: 61-66.