チャのメチル化カテキン生合成酵素CsOMTのcDNA単離と特性
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要約
「べにふうき」生葉から単離したcDNAから推定されるメチル化カテキン生合成酵素CsOMT(Camellia sinensis O-methyltransferase)は27.6KDaの分子量を持ち、EGCGに反応して3種のメチル化カテキンを生成する。
- キーワード:べにふうき、メチル化カテキン、O-メチルトランスフェラーゼ
- 担当:野菜茶研・野菜・茶機能性研究チーム
- 区分:野菜茶業・茶業、食品
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
「べにふうき」茶葉中のepigallocatechin-3-O-(3-O-methyl)-gallate
(EGCG3”Me)等のメチル化カテキンは強い抗アレルギー作用を持ち、作用機作、代謝などが明らかになってきている。しかし、なぜ特定の品種だけがメ
チル化カテキンを多量に含有するのかなど解明されていない部分も多い。「べにふうき」生葉中のメチル化カテキン生合成酵素を明らかにすることで、メチル化
カテキンの生合成経路の解明、メチル化カテキン高含有品種の特性解明やメチル化カテキンの合成制御技術の開発に結びつける。
成果の内容・特徴
- 「べにふうき」生葉からRACE-PCR 法で単離したcDNAから推定されるメチル化カテキン生合成酵素CsOMT(Camellia sinensis O-methyltransferase)のアミノ酸配列は、タバコ、パセリ、ブドウで報告されているカフェオイル-CoA-O-メチルトランスフェラーゼと89%以上の高い相同性を持つ(図1)。
- CsOMTのcDNAは245アミノ酸をコードする735塩基からなっている(図1)。
- CsOMTのcDNAを大腸菌に導入して発現させた酵素の分子量は27.6KDaである(図2)。
- 基質としてEGCG350mMを、メチル基供与体としてSAM(S-adenosylmethionine)800mMを用い、大腸菌発
現粗酵素1mlと37℃で一晩反応させると、EGCGの約40%がEGCG3”,5”diMeに、約7%がEGCG3”Meに、約2%がEGCG4”Me
に変換される。基質に対するSAMの割合を2倍及び5倍に変えると、EGCG3”Meの生成量はほとんど変化しないのに対し、EGCG3”,5”diMe
の生成量は約2.5倍及び4.5倍に増加する(図3)。
成果の活用面・留意点
- 本酵素を用いてメチル化カテキンの生合成(バイオリアクターレベル)が可能となり、生葉中ではほとんど検出されないEGCG3”,5”diMeを生成させることができる。EGCGに対するSAMの割合を5倍以上にしてもEGCG3”,5”Me生成量は極端に増加しない。
具体的データ



その他
- 研究課題名:野菜・茶の免疫調節作用、生活習慣病予防作用を持つ機能性成分の評価法と利用技術の開発
- 課題ID:312-b
- 予算区分:基盤研究費
- 研究期間:2003~2007年度
- 研究担当者:山本(前田)万里、切田雅信(アサヒビール)、本間大樹(アサヒビール)
- 発表論文等:山本ら(2006)「メチル化カテキン生合成酵素をコードする遺伝子」特開2006-141242