茶園での農薬散布に伴うドリフト特性と低減法

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要約

茶樹の葉層への農薬散布は、ノズルから茶樹の樹冠面までの距離を近くすることができるためドリフトが少ない。乗用防除機を使用し、平均粒子径の大きなノズルと飛散防止カバーを併用することにより、さらにドリフトリスクが低減できる。

  • キーワード:茶園、農薬散布、ドリフト、感水紙
  • 担当:野菜茶研・茶生産省力技術研究チーム
  • 代表連絡先:電話0547-45-4654
  • 区分:野菜茶業・茶業、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

2006年、改正された食品衛生法に基づき、残留農薬のポジティブリスト制度が施行された。ポジティブリスト制度の下では、ドリフト(漂流飛散)が原因で散布対象以外の周辺作物から残留基準値を上回って農薬が検出される危険性が指摘されている。茶園における農薬散布は、散布方法の特徴からドリフトリスクがそれほど大きくないと考えられるが、実際のドリフトを調査した事例や具体的なデータはない。そこで、感水紙を用いて茶園における農薬散布に伴うドリフトの実態を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 茶樹の葉層への農薬散布は、複数個のノズルが並んだノズル管を使って弧状仕立ての茶樹うねの上方から下向きに散布する。一般的に市販されている茶園用のノズル管(ノズル間隔17cm、ノズル噴霧角100°)を使用すると、手散布でもノズルから茶樹の樹冠面までの距離を約15cmまで近くすることができる。茶園用の乗用防除機は、樹冠面に沿って円弧状に湾曲しているブームノズル(ノズル間隔17cm、ノズル噴霧角100°)を使用するので、樹冠面からの散布距離を一定にできる(図1)。
  • 散布方法の違いでは、ノズル管が茶樹うねを超えてしまう手散布に比べてブームノズルを使用する乗用防除機のほうがドリフトしにくい(図2)。
  • 噴霧粒子径の違いでは、散布状態が安定している乗用防除機で比較すると、平均粒子径の大きなノズルを使用するほうがドリフトしにくい(図2、図3)。
  • 飛散防止カバーを装着すると、平均粒子径が小さい慣行ノズルでもドリフトを低減する効果が見られる。平均粒子径の大きなノズルと併用すると、強風が吹いた際のドリフトリスクをより小さくできる(図3)。
  • 散布境界から約3m離れた地点におけるドリフト率は、茶園散布(噴霧高87cm、樹高72cm)では平均風速4.1m/s以下の条件で0.1%未満で、噴霧高80cm(キャベツ作の標準)による裸地散布の場合の1/10以下である(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果の内容は、図1のように茶園の風下側に感水紙を並べて、清水を散布し、ドリフト粒子を感水紙で捕捉した試験結果である。ドリフト率の推定は、ドリフト粒子が付着した感水紙をイメージスキャナで画像として読み取り、画像処理ソフトにより個々の液斑の面積を求め、spread factorを用いて液滴の容積に換算し、感水紙上に落下したドリフト量を算出、ドリフト率(%)=(単位面積当たりのドリフト量)/(単位面積当たりの理論散布量)×100で求めた値である。
  • 強風時には飛躍的にドリフト量が増えるので、実際の農薬散布では、ドリフトリスクを可能な限り小さくするため、「強風時には散布作業を行わない」や「散布は作物の近くから」などのドリフト対策事項を守る。

具体的データ

図1 ドリフト試験の概要

図2 手散布と乗用防除機及び粒子径の違いによるドリフト率の比較

図3 飛散防止カバーの有無と平均粒子径の違いにおけるドリフト率の比較

図4 茶園散布と裸地散布におけるドリフト率の比較

その他

  • 研究課題名:生体情報及び高度センシング技術による茶の省力栽培・加工技術の開発
  • 課題ID:223-b
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:角川修、深山大介、荒木琢也
  • 発表論文等:角川ら(2008)茶業研究報告、106:21-38