トマト葉かび病抵抗性遺伝子Cf-9を有する品種を侵す同病菌レースの発生

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要約

群馬県では葉かび病抵抗性遺伝子CCf-9を有するトマト品種を侵す葉かび病菌レース4.9と4.9.11、千葉県と福島県ではレース4.9.11が発生している。Cf-9を有する品種を侵すレース発生の確認は本邦初である。

  • キーワード:トマト葉かび病、レース、抵抗性遺伝子Cf-9
  • 担当:野菜茶研・野菜IPM研究チーム
  • 代表連絡先:電話050-3533-3863
  • 区分:野菜茶業・野菜生産環境
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

トマト葉かび病は、減農薬栽培の普及により大きな問題となってきている。本病に対する抵抗性遺伝子を導入した品種も開発されており、従来からのCf-2Cf-4に加え、2005年からはCf-9を有する品種が広く栽培され、それぞれ一定期間、被害を防いできている。しかし、Cf-2Cf-4を侵すレースが既に発生し、2007年にはCf-9を有する品種にも葉かび病様の病害が発生している。そこで、このCf-9を有する品種に発生した病害が葉かび病か否かを明らかにするとともに、そのレースを決定して防除対策に活用する。

成果の内容・特徴

  • 2007年5月に千葉と群馬、8月に福島の各県でCf-9を有する品種の罹病葉から分離された22菌株の単胞子分離菌はいずれも、培養性状、分生子および分生子柄の形態から、トマト葉かび病菌Passalora fulva (異名:Cladosporium fulvum、Fulvia fulva)と同定される(図)。
  • 分離22菌株の分生子を、トマト葉かび病菌のレース検定用品種に噴霧接種してレース検定を行った結果、群馬県由来の10菌株はレース4.9、群馬県由来の2菌株、千葉県由来の5菌株と福島県由来の5菌株はレース4.9.11である(表)。
  • 群馬、千葉、福島の各県では、Cf-9を有する品種の栽培開始から2年後には、Cf-9を侵すレースによる葉かび病の発生が認められている。

成果の活用面・留意点

  • 本研究で発見されたレース4.9、4.9.11が発生した地域でCf-4Cf-9を有する品種を栽培する際には、これらのレースによる葉かび病の発生、蔓延に対する注意を要する。
  • 他の地域においても、レース4.9、4.9.11が発生する恐れがある。
  • 国内ではCf-2Cf-4Cf-9を有する品種が栽培されているが、これらの品種でも発病が認められた場合には、殺菌剤の散布等の防除対策を速やかに行う。

具体的データ

図 トマト葉かび病の葉裏の病徴(左)・菌叢(中)・分生子(右)(スケールは100μm)

表 分離菌株の分生子を噴霧接種した場合のトマト葉かび病菌レース判別品種の反応

その他

  • 研究課題名:野菜栽培における土壌微生物、天敵の機能解明と難防除病害虫制御技術の開発
  • 課題ID:214-k
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2007~2008年度
  • 研究担当者:窪田昌春、塩谷純一朗(みかど協和)、東貴彦(熊本県)、飯田祐一郎、西和文
  • 発表論文等:Enya J. et al. (2009) J. Gen. Plant Pathol. 75:76-79.