チャにおける高アントシアニン新品種候補「枕個03-1384」

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要約

「枕個03-1384」は炭疽病、輪斑病に抵抗性を有し、高アントシアニン系統である「茶中間母本農6号」よりも新芽中のアントシアニン含量が高く、栽培特性に優れている。

  • キーワード:チャ、枕個03-1384、品種、アントシアニン
  • 担当:野菜茶研・野菜・茶機能性研究チーム、茶IPM研究チーム、茶施肥削減技術研究チーム、
    日本製紙グループ本社
  • 代表連絡先:電話0993-76-2127
  • 区分:野菜茶業・茶業
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

アントシアニンは抗酸化作用や抗眼精疲労作用が期待できる植物由来天然成分として注目されており、色素原料として果樹類やいも類等様々な植物が利用されている。チャにおいても高アントシアニン品種が育成されれば、カテキン類等の機能性成分とアントシアニンの同時利用が可能となり、新たな需要の創出が期待できる。これまでに高含量育種素材として「茶中間母本農6号」を育成したが、定植後の活着や収量性などの栽培特性が劣り実用生産が困難であることから、「茶中間母本農6号」を利用して、優れた栽培特性のアントシアニン高含有品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「枕個03-1384」は「茶中間母本農6号」を交配親にして、その自然交雑実生群から選抜した系統であり、新芽の色および水色は濃い紅色を呈する(図1、図2)。
  • 一番茶新芽のアントシアニン含量は「やぶきた」の約20倍、茶中間母本農6号の約2倍である(表1)。
  • 秋冬番茶のカテキン含量は、「茶中間母本農6号」よりもEGCGが多く、「やぶきた」よりもEGCが少ない(表1)。
  • 圃場における定植後の活着は、光独立栄養培養法により育苗した苗を用いた場合、茶「中間母本農6号」よりも優れ(表2)、幼木期の生育は良好である。
  • 炭疽病および輪斑病に対する抵抗性は「やぶきた」よりも強であるが、赤葉枯病にはやや弱である(表2)。
  • 樹姿は中間型で定植後の活着、樹勢が良好であることから、幼木期の仕立ては容易である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 摘採適期を過ぎるとアントシアニン含量は減少する。
  • 挿し木床での生育は「やぶきた」よりも劣るが、光独立栄養培養技術を用いて育苗したプラグ苗は定植後の活着および生育が良好であることから、定植時は大苗もしくはプラグ苗を用いることが好ましい。
  • 本系統は、アントシアニン高含有機能性茶飲料や天然着色料としての利用が考えられる。

具体的データ

図1 「枕個03-1384」の育成系統図

図2 「枕個03-1384」の一番茶新芽と水色

表1 「枕系47-18」の栽培加工特性(野茶研枕崎茶業研究拠点, 2008)

表2 種子島の現地実証試験圃場における「枕系47-18」と「くりたわせ」の栽培特性

その他

  • 研究課題名:茶の遺伝資源を活用したアントシアニン等の機能性成分高含有育種素材の開発
  • 課題ID:312-b
  • 予算区分:基盤研究費・委託プロ(イノベーション創出)
  • 研究期間:2001~2008 年度
  • 研究担当者:根角厚司、荻野暁子、吉田克志、田中淳一、谷口郁也、山本(前田)万里、
    村上章(日本製紙グループ本社)