牧之原赤黄色茶園土壌の細菌相

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要約

変性剤濃度勾配電気泳動法で把握した牧之原赤黄色強酸性茶園土壌の細菌相は、施肥位置である茶園の畝間が株下に比較して単純である。また、本茶園土壌はγ-プロテオバクテリア、アシッドバクテリアが60%近くを占め、他作物の栽培土壌とは異なる特徴を示す。

  • キーワード:強酸性茶園土壌、土壌細菌相、クローンライブラリー、PCR-DGGE法
  • 担当:野菜茶研・茶施肥削減技術研究チーム
  • 代表連絡先:電話0547-45-4924
  • 区分:野菜茶業・茶業、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

茶園土壌は長年の多施肥により強酸性を示し、理化学性が劣化していることが明らかにされているが、物質循環に関わる微生物性については糸状菌寡占の状態であることが報告されているのみで、未知の部分が多い。また、従来用いられてきた培養法では、最近門が創設されたアシッドバクテリアは検出が困難である。そこで、分子微生物生態学の手法を用いて、強酸性茶園土壌の細菌相の特徴を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ポリメラーゼ連鎖反応-変性剤濃度勾配電気泳動法(PCR-DGGE法)による解析では、牧之原赤黄色茶園土壌の細菌種を表すバンドは施肥位置である畝間(10~20cm、pH3.7)で少なく、株下(10~20cm、pH4.7)で多い(図1)。
  • 牧之原赤黄色茶園土壌( 株下、10~20cm、pH5.0)からクローンライブラリーを構築し、クローニングされた細菌120クローンについて16S rDNAの塩基配列をデータベース(RDP2)と照合すると、γ-プロテオバクテリア 30%、アシッドバクテリア 29%、次いでα-プロテオバクテリア 18%、放線菌 10%である(図2)。
  • 以上のように、牧之原赤黄色茶園土壌の細菌相にはγ-プロテオバクテリア、アシッドバクテリアが多く、α-及びβ-プロテオバクテリアが多い他作物栽培土壌(Appl.Environ.Microbiol.72.1719-1728.2006)とは異なる特徴を示す。

成果の活用面・留意点

  • 茶園では畝間土壌の微生物相が単純化している。この知見は茶業分野では初見であるが、これに基づき、今後酸度改良や有機物の施用など茶園土壌の微生物性の改良法を検討する際の基礎資料として活用できる。

具体的データ

図1 牧之原赤黄色茶園土壌のDGGEによる解析(A:畝間、B:株下) 土壌は2006年2月に10~20cmの深さで採取した。

図2 牧之原赤黄色茶園土壌の細菌相 土壌(2007年2月に10~20cmの深さで採取)から分離した細菌120クローンについて、16S rDNA塩基配列の相同性検索を行った。

その他

  • 研究課題名:茶の効率的施肥技術の開発及び少肥適応性品種との組み合わせによる窒素施肥削減技術の開発
  • 課題ID:214-m
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:渡部育夫、谷口郁也、野中邦彦