ビッグベイン病抵抗性組換えレタス「MiLV-CP-1」

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要約

ミラフィオリレタスウイルス(MiLV)の外被タンパク質(CP)遺伝子を導入した組換えレタス「MiLV-CP-1」はMiLVの増殖を抑制する。特定網室での試験において、本系統は既存の抵抗性品種より強度のレタスビッグベイン病抵抗性を示す。

  • キーワード:レタスビッグベイン病、MiLV、遺伝子組換え、外被タンパク質遺伝子
  • 担当:野菜茶研・野菜ゲノム研究チーム
  • 代表連絡先:電話050-3533-3863
  • 区分:野菜茶業・野菜育種
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

レタスビッグベイン病はレタスの品質・収量の低下を招く土壌伝染性のウイルス病であり、国内および世界各地のレタス産地で問題となっている。本病の防除のため抵抗性品種の育成が強く望まれているが、強度抵抗性の育種素材がないことから、従来の交雑育種による強度抵抗性品種の育成は困難な状況にある。そこで、本病の病原であるMiLVの外被タンパク質(CP)遺伝子をレタスに導入することにより、既存のレタスビッグベイン病抵抗性品種より強度の抵抗性を有する組換えレタスを作出する。

成果の内容・特徴

  • 組換えレタス「MiLV-CP-1」は、MiLV CP遺伝子の逆位反復配列をアグロバクテリウム法によってレタス品種「カイザー」に導入した固定系統である(図1)。本系統は、「カイザー」と比較して特段の形態的な差異はない。
  • MiLV CP遺伝子の逆位反復配列は、「MiLV-CP-1」のゲノムに1コピーだけ組み込まれている。組み込まれた部位において、カナマイシン耐性遺伝子(npt II)は欠失し、「カイザー」由来のゲノムは1936塩基が欠失している(図1)。
  • 「MiLV-CP-1」はMiLVの増殖を抑え、レタスビッグベイン病の発症を抑制する(図2、表1)。特定網室内の汚染ベッドでの栽培試験において、本系統は既存の抵抗性品種「Pacific」より強度のレタスビッグベイン病抵抗性を示す(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 「MiLV-CP-1」は、レタスビッグベイン病抵抗性の育種素材として利用できる(抵抗性は交雑後代に優性に遺伝する)。
  • 本系統およびその交雑後代の野外栽培試験を実施するためには、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」に基づく第一種使用規程の承認を受ける必要があり、商品化するためには食品衛生法に従って安全性審査を受ける必要がある。

具体的データ

図1 組換えレタス「MiLV-CP-1」に導入された遺伝子の構造

図2 MiLV接種後の「MiLV-CP-1(T3世代)」と「カイザー」の様子

表1 「MiLV-CP-1(T4世代)」と既存品種の抵抗性比較

その他

  • 研究課題名:野菜におけるDNAマーカー整備及び遺伝子機能解明と利用技術の開発
  • 課題ID:221-i
  • 予算区分:交付金プロ(組換え植物)、交付金プロ(実用遺伝子)
  • 研究期間:2003~2008年度
  • 研究担当者:川頭洋一、冨士山龍伊、野口裕司
  • 発表論文:Kawazu et al. (2009) Transgenic Research 18(1):113-120