ナスとその近縁野生種に新たに見出された3種のアントシアニン

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

ナスの1系統、近縁野生種2系統の果皮にはそれぞれデルフィニジン3-グルコシド、ペチュニジン3-(p-クマロイルルチノシド)-5-グルコシドが存在する。日本ナスの果皮にはナスニンよりも高い抗酸化活性を示すデルフィニジン3-カフェオイルルチノシド5-グルコシドが含まれる。

  • キーワード:ナス、アントシアニン、抗酸化活性
  • 担当:野菜茶研・野菜・茶機能性研究チーム
  • 代表連絡先:電話0547-45-4964
  • 区分:野菜茶業・野菜品質・機能性
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

植物に広く存在するアントシアニン色素は強い抗酸化作用をはじめ様々な生体調節機能を持つことが明らかにされてきた。ナス果皮のアントシアニンとして日本ナスのデルフィニジン3-(p-クマロイルルチノシド)-5-グルコシド(ナスニン)や米ナスのデルフィニジン3-ルチノシド(D3R)が知られているが、広範なナス遺伝資源の中にはより高い機能性を持つアントシアニンが存在する可能性がある。そこで、高機能性ナスの栽培や育種を目的として、近縁野生種を含むナス遺伝資源のアントシアニンプロフィールを解析し、抗酸化活性の高いアントシアニンを探索する。

成果の内容・特徴

  • 100系統のナス及び9種13系統の近縁野生種の果皮のアントシアニンプロフィールは日本ナスタイプ、米ナスタイプ、2つの新奇タイプの4タイプに分けられる。大部分の系統は日本ナスタイプあるいは米ナスタイプであり、2つの新奇タイプのアントシアニンプロフィールはそれぞれナス1系統(図1)、近縁野生種Solanum nigrum(図2)及びSolanum sp.2系統のみに認められる。
  • ナス1系統及び近縁野生種2系統の主要アントシアニンはそれぞれ、デルフィニジン3-グルコシド(D3G)、ペチュニジン3-(p-クマロイルルチノシド)-5-グルコシド(PCRG)である(図3)。
  • 日本ナスにはナスニンのほかに新たに見出されたデルフィニジン3-カフェオイルルチノシド-5-グルコシド(DCaRG)が含まれる(図3)。
  • 5種のアントシアニンのリノール酸ラジカル捕捉活性はDCaRG > ナスニン = PCRG >> D3R = D3Gであり、DCaRGはナスニンよりも高い抗酸化活性を示す(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 日本ナスの果皮に含まれるDCaRGはナスニンよりも高い抗酸化活性を示すものの、含量はナスニンの十分の一以下である。総アントシアニン中に占めるDCaRGの含量比はナスの栽培条件の影響を強く受けるため、その含量比を高める最適な栽培条件を見出すことで、より高い抗酸化活性を持つナスを栽培することができる。

具体的データ

図1 新奇アントシアニンプロフィールを示すナスPI286106図2 新奇アントシアニンプロフィールを示すナス近縁野生種Solanum nigrum BIR/S 0278

図3 ナス及び近縁野生種に新たに見出されたアントシアニンの構造

図4 ナスアントシアニンのリノール酸ラジカル捕捉活性

その他

  • 研究課題名:アントシアニンのプロフィール解析によるナスの機能性成分の特定
  • 課題ID:312-b
  • 予算区分:交付金プロ(二次代謝産物)
  • 研究期間:2004~2006 年度
  • 研究担当者:東敬子、一法師克成
  • 発表論文等:Azuma K. et al. (2008) J. Agric. Food Chem. 56: 10154-10159.