タバココナジラミバイオタイプQの日本における寄主植物の範囲

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要約

世界各地で重要害虫として問題になっているタバココナジラミバイオタイプQは、日本国内で少なくとも30科64種類の植物を寄主として利用する。このうち、バイオタイプBと共通するものは少なくとも19科40種類に及ぶ。

  • キーワード:タバココナジラミ、バイオタイプQ、バイオタイプB、寄主植物
  • 担当:野菜茶研・野菜IPM研究チーム
  • 代表連絡先:電話050-3533-3863
  • 区分:野菜茶業・野菜生産環境
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

侵入害虫であるタバココナジラミバイオタイプBおよびQは、果菜類を中心に吸汁害とすす病を誘発し、トマト黄化葉巻病の病原ウイルス(TYLCV)を媒介することから、トマト生産で大きな脅威を与えている。近年、両バイオタイプがキュウリ退緑黄化病とメロン退緑黄化病の病原ウイルス(CCYV)を媒介することが判明し、ウリ類でも防除の重要性が増している。さらに、バイオタイプQは両ウイルスの媒介に加えて、各種薬剤に抵抗性を獲得する能力が高いことから、果菜類で最も重要な害虫の一つとなっている。しかし、バイオタイプは形態による識別が不可能であり、バイオタイプQの寄主範囲は明確になっていない。そこで、バイオタイプを遺伝子レベルで分類し、バイオタイプQの寄主範囲を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • バイオタイプQの寄主植物は日本国内で少なくとも30科64種類(変種名、作物名を含む)にわたる(表1)。
  • バイオタイプQの寄主植物の中で、キク科植物が最も多い9種類であり、全種類数の14.1%を占めている。これに続いて、ナス科(6種類)、ウリ科(6種類)、シソ科(6種類)に寄主となる植物が多く、主要な果菜類の多くがバイオタイプQの寄主植物となっている(表1)。
  • バイオタイプBの寄主植物は28科75種類と報告され(安藤・林、1992)、野菜茶業研究所(2005~2008)が確認した寄主植物を加えると30科88種類であり、両バイオタイプに共通する種類は19科40種類に及ぶ(表1)。これはバイオタイプQの寄主植物の62.5%を占めている。

成果の活用面・留意点

  • バイオタイプ間の寄主植物の違いを明確にすることは、タバココナジラミの防除対策を立てるうえで貴重な資料となる。また、バイオタイプQの寄主でバイオタイプBの寄主として報告がない植物については、バイオタイプBの発育の可否を確認する必要がある。
  • 今回の調査は2005~2008年に実施し、タバココナジラミのバイオタイプはミトコンドリアDNAのCOI領域の部分塩基配列を解析する方法(Frohlich et al., 1999)によって判定した。
  • タバココナジラミは、卵から羽化まで同一の寄主植物上で発育し、幼虫と成虫の寄主は一般に共通である。そのため、今回の調査ではタバココナジラミバイオタイプQの成虫が採集された植物を寄主植物として記載した。

具体的データ

表1 タバココナジラミバイオタイプQの寄主植物(成虫が採集されたもの)

その他

  • 研究課題名:野菜栽培における土壌微生物、天敵の機能解明と難防除病害虫抑制技術の開発
  • 課題ID:214-k
  • 予算区分:実用技術、基盤研究費
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:飯田博之、本多健一郎、北村登史雄、水澤靖弥(福井農試)、鎌田茂(鹿児島農総セ)、
    大野徹(愛知県農総試)、広瀬拓也(高知農技セ)
  • 発表論文等:飯田ら(2009) 関西病虫研報 51:75-77