ウリ科野菜果実汚斑細菌病の防除技術体系

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要約

病原菌を持たない原種種子を用いた採種栽培、Sweat-bag seedling法による種子検査および銅水和剤・酢酸混合液浸漬と乾熱処理の組合せ処理により病原菌非汚染種子を供給する。さらに育苗期に重点をおいた防除により果実汚斑細菌病の防除が可能となる。

  • キーワード:ウリ科野菜、果実汚斑細菌病、種子伝染病、種子検査、種子消毒、防除
  • 担当:野菜茶研・野菜IPM研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7035
  • 区分:野菜茶業・野菜生産環境、共通基盤・病害虫
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

ウリ科野菜に発生する果実汚斑細菌病は、植物防疫法の施行規則によってわが国への侵入を警戒している病害である。しかし、本病原菌(以下Aac)に汚染した種子が原因と考えられる発生が1998年以降スイカとメロンで突発的に起こっている。本病は主に種子伝染することからAacを保菌しない健全種子の供給が重要である。日本の栽培事情に対応した本病の防除技術は少なく、種子生産から一般栽培までの一貫した防除体系も明らかにされていない。そこで、本病の日本への再侵入と国内での定着・発生拡大の防止を目的として、種子生産から一般栽培における予防管理まで個別の防除関連技術を開発し、それらを体系化する。

成果の内容・特徴

  • 採種栽培は本病の未発生地で行うことが望ましく、発生に好適でない地域、季節を選択する。Aacを保持しないことを確認した種子を用いて栽培し、一般栽培よりも厳密な防除を行う。本病が発生した圃場からは採種しない。
  • スイカ、メロン、キュウリ、トウガン、日本カボチャ等の小型種子では、市販種子に対して、銅水和剤・食酢混合液への浸漬処理と75°Cで4日間の乾熱処理とを組合せた方法によって種子消毒する。
  • 種子は、Sweat-bag seedling法と選択培地法およびPCR法を組み合わせた方法によりAac汚染の有無を検査する。
  • 一般栽培の防除は育苗期に重点を置き、播種時の食酢灌注処理、接ぎ木前1回と接ぎ木後の養生期間終了後2回のカスガマイシン・銅水和剤を基幹とした薬剤散布、接ぎ木時のナイフと手指の消毒を行う。
  • 播種時の食酢灌注処理では、播種後の灌水の代わりとして10~15倍程度に希釈した食酢液を灌注し、以後は通常に管理する。

成果の活用面・留意点

  • 本情報に関わる「ウリ科野菜果実汚斑細菌病防除マニュアル(一般栽培用、種子生産・検査用)」は、野菜茶業研究所のホームページからPDFファイルとして入手できる。 (http://www.naro.affrc.go.jp/vegetea/joho/index.html)
  • 西洋カボチャ、ユウガオ等の大型種子では、銅水和剤・食酢混合液への浸漬処理と乾熱処理との組合せでは十分な種子消毒の効果が得られないが、予防的に処理する。
  • Sweat-bag seedling法を適用する場合、種子の処理歴を予め把握する。本法は、海外での過酢酸処理種子には適用できるが、銅水和剤で処理した種子には適用できない。
  • 播種時の食酢灌注処理を行う場合は、事前に使用する作目・品種で薬害発生の有無を確認する。

具体的データ

図1 ウリ科野菜果実汚斑細菌病の防除技術体系

その他

  • 研究課題名:野菜における土壌微生物、天敵の機能解明と難防除病害虫制御技術の開発
  • 中課題整理番号:214k
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:白川隆、窪田昌春、山内智史、佐藤仁敏(種管セ)、小木曽秀紀(長野野花試)、木口忠彦(道立花野技セ)、小河原孝司(茨城農総セ)、宮本拓也(茨城農総セ)、寺沢祐一(カネコ種苗)、五十嵐充(サカタのタネ)、駒場雅彦(タキイ種苗)、原一晃(ナント種苗)