L4遺伝子を保有するPMMoV抵抗性ピーマンF1品種「L4京鈴」
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
「L4京鈴」はL4遺伝子によるPMMoV(P1.2.3)抵抗性を有する青果用ピーマンF1品種である。植物体特性および収量性は「京鈴」と同等である。
- キーワード:ピーマン、青果用、PMMoV抵抗性
- 担当:野菜茶研・野菜育種研究チーム
- 代表連絡先:電話050-3533-3863
- 区分:野菜茶業・野菜育種
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
トウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV)によるモザイク病は、日本のピーマン栽培において、大きな被害を及ぼす土壌伝染性病害である。これまで、本病害は主に臭化メチルの土壌消毒により防除されてきたが、臭化メチル全廃後、本病害の拡大が危惧されている。わが国では、既にPMMoV(P1.2)に対して強度の抵抗性を示すL3遺伝子を有する品種が育成されている。しかし、近年、これら品種を侵すPMMoV系統が発生し、ピーマンの安定的な生産を脅かしている。そこで、L3遺伝子より多くのPMMoV系統に抵抗性を示すL4遺伝子を保有した青果用品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「L4京鈴」は、L4遺伝子を保有するトウガラシ近縁種(Capsicum chacoense) の系統PI260429にピーマン固定系統 LS3973を連続戻し交雑した系統にピーマンF1品種「Atlantic」を交雑して得たCT97Dに、「京波」の父親系統および「京鈴」の父親系統を交雑して得た雑種の自殖後代を花粉親とし、「京鈴」の母親系統を種子親とした青果用ピーマンF1品種である(図1)。
- 「L4京鈴」は未熟果色が緑色の中長型ピーマンである(図2)。
- 「L4京鈴」の第1分枝の節位、節間長、未熟果色、果形、果実の長さ、早晩性などの形質は「京鈴」に類似し、総収量は「京鈴」よりやや多い(表1)。
- 「L4京鈴」はPMMoV(P1.2.3)に対して過敏感反応型の抵抗性を有するため、ウイルスを接種しても接種葉に局部病斑が認められるだけで全身感染しない(表2)。
成果の活用面・留意点
- 「L4京鈴」は国内の主要品種である「京鈴」と植物体特性が類似しているので、「京鈴」と同様の栽培が可能である。
- 「L4京鈴」はすでに市販されており、日本各地で栽培可能である。
- 本品種の過度な連作により、L4遺伝子を打破するPMMoV系統が発生することが懸念されるため、栽培はL3遺伝子を持つ品種に被害が出ている産地に限定するとともに、同一産地での長期連用は控える。
- 「L4京鈴」はタキイ種苗株式会社と野菜茶業研究所とで共同育成した品種である。また、「L4京鈴」は商品名であり、品種登録出願時の品種名は異なる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:病虫害抵抗性、省力・機械化適性、良食味等を有する野菜品種の育成
- 中課題整理番号:211j.1
- 予算区分:基盤、連携実用化研究
- 研究期間:1991~2007年度
- 研究担当者:松永啓、斎藤新、齊藤猛雄、吉田建実、坂田好輝、山田朋宏、島越敏(タキイ種苗) 、畠中誠(タキイ種苗)、浦霜聡一(タキイ種苗)
- 発表論文等:島越ら(2009)品種登録出願の番号第23637号