大規模施設トマト残渣の発生量推定と堆肥化における物質収支
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要約
促成長期栽培で年間40kg/m2のトマト果実を生産した場合、約20kg/m2の廃棄物(残渣)が発生し、6割は葉、4割は果実である。残渣は堆肥化処理により現物重量で17%に減少でき、肥料成分として21g/m2のリンが回収できる。
- キーワード:残渣、大規模トマト生産、物質収支、肥料成分、堆肥化
- 担当:野菜茶研・高収益施設野菜研究チーム
- 代表連絡先:電話0569-72-1166
- 区分:野菜茶業・野菜栽培生理
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
施設生産の大規模化が進むと、生産に伴って廃棄される残渣も大量に生じる。環境保全や資源の有効利用の観点から、作物残渣の有効活用が求められる。そこで促成長期栽培において栽培管理上発生する年間のトマト残渣発生量を、大規模施設において10週間で発生したトマトの摘葉量と摘果量から推定する。さらに、その残渣を加熱式堆肥化装置で処理した場合の物質収支を評価する。トマト残渣の堆肥化物資源としての有効性を明らかにし、土壌改良資材や養液栽培用培地等への活用を促す。
成果の内容・特徴
- 年間で40 kg/m2のトマト果実を生産した場合、11.6 kg/m2の葉と8.7 kg/m2の果実(不良果や摘果)の合計約20 kg/m2の残渣が発生すると推定される。このことからトマト栽培では植物体総量のおよそ3分の1が廃棄物となり、このうち6割は葉、4割は果実と推定される(図1)。
- 堆肥化により残渣の容積はほぼ半減し、単位面積当たりの合計現物重量は23.2から4.0 kg/m2へと17%に減量する(表1)。
- 堆肥化で発生するNとCO2とP(リン)は、それぞれ49 g/m2、5.5 kg/m2、21 g/m2であり、生産に活用できる量がまとまって回収でき、NとPは肥料として、CO2は施設生産におけるCO2施用に活用できる可能性がある。
成果の活用面・留意点
- 製造したトマト残渣堆肥を培地としてコマツナの生育試験を行ったところ、発芽および生育阻害は認められない。
- 水分特性曲線および元素組成から、トマト残渣堆肥はバーク堆肥に類似した性質を有し、土壌改良材や養液栽培用培地等への使用が可能である。
- 本発生量に加えて、栽培終了時には4.9 kg/m2の茎残渣が発生する。
- Pは投入量より増加しているが、これは見積もりに伴う誤差であり、残渣として投入したPは堆肥として全量回収されると考えられる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:トマトを中心とした高収益施設生産のための多収、低コスト及び省力化技術の開発
- 中課題整理番号:213a
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2009年度
- 研究担当者:中野明正、安場健一郎、鈴木克己、高市益行
- 発表論文等:中野ら(2010)野菜茶研研報、9 :197-204