送風式農薬散布機のクワシロカイガラムシ防除専用噴管と防除効果

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要約

クワシロカイガラムシ防除において、送風式農薬散布機と新たに開発した専用噴管を利用することで、40~60%の減量散布時でも、葉層下部の枝幹部に十分な薬液付着が得られる。また慣行防除法と同等の防除効果が得られる。

  • キーワード:茶園、クワシロカイガラムシ、送風式農薬散布機、減量散布
  • 担当:野菜茶研・茶生産省力技術研究チーム
  • 代表連絡先:電話0547-45-4101
  • 区分:野菜茶業・茶業、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

クワシロカイガラムシは、薬液が到達しにくい葉層下部の枝条に寄生するため、動噴と手散布ノズルで樹冠面上方から散布する慣行防除法では1000L/10aを超える多量の散布薬液を要する。そのため、防除作業の省力軽作業化と減農薬の観点から、減量散布法の確立が強く求められている。一方、ミスト散布機構により葉層内への薬液到達性を高めた送風式農薬散布機でハマキガ類や炭疽病、輪斑病に対する減量散布の可能性が示され(H17年度野菜茶業研究成果情報)、クワシロカイガラムシ防除への適用も期待される。そこで、送風式農薬散布機で利用できるクワシロカイガラムシ防除専用噴管(以下、専用噴管)を開発し、薬液付着特性と防除効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 開発した専用噴管は、市販の送風式農薬散布機に装着して使用する(図1)。
  • 開発した専用噴管は、樹冠面に沿うように28本の噴口が配置されており、各噴口先端には2つの薬液吐出ノズルがある。散布時は、噴口先端部が樹冠面から約5cmの高さになるように、また噴霧方向はほぼ鉛直下向きになるように調整し、作業速度は0.3m/sとする。噴口から5cmの位置における風速は25m/s以上とする。
  • 模擬枝を用いた薬液付着度調査では、散布量600L/10a、400L/10aともに、葉層内の上部ほど付着度が高い。葉層下部では、ほぼ均一な付着を示す付着度5程度となる(表1)。
  • クワシロカイガラムシ第2世代ふ化幼虫を対象とした防除効果試験において、防除前の第1世代雄繭発生量と防除後の第2世代雄繭発生量の比較から、散布量600L/10a、400L/10aともに慣行防除区と同等の防除効果が認められる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 専用噴管は、曲率半径3000mmの刈刃で摘採されている、うね間1.8mの茶園に適用できる。
  • 上記付着試験および防除効果試験は、二番茶摘採後の研究所内茶園における結果であり、薬液付着度は茶樹葉層の繁茂状態の影響を受け、防除効果はクワシロカイガラムシの発生状況、使用農薬や防除対象個体群の薬剤感受性によって異なる。
  • 送風式農薬散布機、開発した専用噴管ともにメーカーより購入できる。

具体的データ

図1 送風式農薬散布機と専用噴管

表1 樹冠内の模擬枝に対する部位別付着度

表2 送風式農薬散布によるクワシロカイガラムシの防除効果

その他

  • 研究課題名:茶における減農薬機械化技術の開発および実用化
  • 中課題整理番号:223b
  • 予算区分:基盤、交付金プロ(精密畑作)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:深山大介、角川修、荒木琢也、佐藤安志、寺田勝二((株)寺田製作所)
  • 発表論文等:深山ら(2009)農作業研究、44(4):233-239