「べにふうき」緑茶連続飲用による血圧上昇抑制

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要約

血圧が高めの被験者が「べにふうき」緑茶を8週間連続飲用すると、試験開始時に比べ有意に収縮期血圧が低下する。

  • キーワード:エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル)ガレート(メチル化カテキン;EGCG3"Me)、「べにふうき」緑茶、収縮期血圧、アンジオテンシンI変換酵素(ACE)、ミオシン軽鎖リン酸化抑制
  • 担当:野菜茶研・野菜・茶機能性研究チーム
  • 区分:野菜茶業・茶業、食品
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

茶葉中カテキン、特にエピガロカテキンガレート(EGCG)は血圧上昇に関わるアンジオテンシンI変換酵素活性の阻害作用を持つことが知られている。そこで、EGCGと構造が類似したメチル化カテキン(EGCG3"Me)を多く含有する「べにふうき」緑茶の新たな機能性を見出すため、血圧が高めの被験者に飲用させるヒト介入試験を行い、その作用機序を解明する。

成果の内容・特徴

  • 血圧が少し高めの正常高値血圧(収縮期血圧130~139mmHgまたは拡張期血圧85~89mmHg)および軽症高血圧(収縮期血圧140~159mmHgまたは拡張期血圧90~99mmHg)の成人男性10人に「べにふうき」緑茶(EGCG3"Me 34mg、EGCG 126mg含有)ティーバッグを熱湯で抽出し、1日2回ずつ飲用してもらうオープン試験では、飲用4週間後から血圧が低下し、8週間後では収縮期で有意な低下(平均8.65mmHg)が認められる(図1)。
  • 軽症高血圧の成人男性20人を無作為に2群に分け、「べにふうき」緑茶(EGCG3"Me 25mg、EGCG 122mg含有)、「やぶきた」緑茶(EGCG 151mg含有)カプセルを1日2回ずつ摂取してもらう群間比較二重盲検試験では、「べにふうき」群では、摂取8週間後ではスタート時に比べ、収縮期で平均6.2mmHg、拡張期で平均3.2mmHg低下し、「やぶきた」群との差が認められる(図2)。
  • EGCG3"MeおよびEGCGは、アンジオテンシンIIを生成して血圧上昇の原因となるアンジオテンシンI変換酵素(ACE)活性を抑制する。その強さはEGCG3"Me>EGCGであり、0.1mM以上で両者間で有意差がある(図3)。
  • EGCG3"MeおよびEGCGは、本態性高血圧を抑制すると考えられる平滑筋収縮に関わるミオシン軽鎖(MLC)リン酸化(in vitro試験)を抑制し、その強さはEGCG>EGCG3"Meである。動物が肝臓でEGCGから代謝物として生成するEGCG4"MeにはMLCリン酸化抑制活性は認められない(図4)。

成果の活用面・留意点

  • MLCリン酸化では、上記のカテキンの他、弱いながらエピカテキンガレート(ECG)も抑制効果を示す。

具体的データ

図1 血圧に与える「べにふうき」緑茶連続飲用の影響(オープン試験)

図2 血圧に与える「べにふうき」緑茶連続摂取の影響(群間比較二重盲検試験)

図3 アンジオテンシンI転換酵素(ACE)活性に及ぼすカテキンの影響

図4 リン酸化ミオシン軽鎖レベルに及ぼす茶葉中カテキンの影響

その他

  • 研究課題名:動物、ヒトを用いた薬理効果試験、生体吸収性・安定性・成分特性等の解明による茶葉中抗アレルギー成分、抗ストレス成分の飲食品、医薬部外品への応用
  • 中課題整理番号:312b
  • 予算区分:基盤、委託プロ(食品)
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:山本(前田)万里、栗田郁子(森永製菓)、亀井優徳(森永製菓)、立花宏文(九州大学)
  • 発表論文等: 1)山本ら「血圧調整剤及びこの血圧調整剤を含有した医薬品」特開2007-70338 2)Kurita I. et al.(2010) J.Agric. Food Chem. 58:1903-1908