応力曲線の解析に基づくキュウリ果実の客観的かつ定量的な食感評価法

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要約

応力曲線のフラクタル解析やパワースペクトル解析などに基づくキュウリ果実の新たな食感評価法により、キュウリ果実の食感(歯触り)を客観的かつ定量的に評価できる。

  • キーワード:キュウリ、食感、フラクタル次元、パワースペクトル、ピーク解析、二次微分
  • 担当:野菜茶研・野菜育種研究チーム
  • 代表連絡先:電話050-3533-3863
  • 区分:野菜茶業・野菜育種
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

シャキシャキ、パリパリ、ポリポリなどの様々な言葉で表現されるキュウリ果実の食感(歯触り)は、キュウリのおいしさを決める重要な要素である。食感に関する試験研究や育種を行う際には果実物性の精度の高い評価が必要になるが、キュウリでは評価者の主観に基づく定性的な評価が広く行われている。一方、加工食品分野では、試料をプランジャーなどで破断するときに得られる応力曲線のフラクタル解析、パワースペクトル解析およびピーク解析などが加工物の食感評価に用いられている。本研究ではこれら解析法に加え、過去にキュウリ果実の物性評価のために開発された二次微分に基づく解析法(堀江ら2004; 園学研 3: 425-428)と食感(歯触り)の官能評価値との関連性を検証し、試験研究や育種に適用可能な客観的かつ定量的なキュウリ果実の食感評価法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 果肉に直径3mmのプランジャーを貫入させたときに得られる応力曲線のフラクタル次元、パワースペクトルの和、ピーク数および二次微分値の総和(CI: Crispness index)により、その曲線の滑らかさの程度を評価することができる(図1)。また、応力曲線が滑らかなほど全ての特徴量が低い値をとり(図1)、これら特徴量間には強い正の相関がある(データ省略)。
  • 果肉の応力曲線の滑らかさの程度には明瞭な品種間差がみられる。また、応力曲線のフラクタル次元、パワースペクトルの和、ピーク数および二次微分値の総和に有意な品種間差、栽培時期間差およびそれらの交互作用が認められる(表1)。
  • 食感(歯触り)の官能評価値と応力曲線のフラクタル次元、パワースペクトルの和および二次微分値の総和に有意な正の相関が認められることから(図2)、これら特徴量により、キュウリ果肉の食感(歯触り)を客観的かつ定量的に評価できる。

成果の活用面・留意点

  • フラクタル解析、パワースペクトル解析、ピーク解析および二次微分に基づく解析により得られる特徴量は、算出過程は全く異なるが、応力曲線の滑らかさの程度を評価でき、果肉の食感(歯触り)の指標となる点で共通している。
  • 食感に関する品種評価、遺伝解析および育種においてこれらの評価法を活用できる。
  • 採用する解析法は試料間差の検出能力に基づいて決定する。ただし、果実物性の評価結果の妥当性を確認するためにも、2つ以上の解析法を用いることが推奨される。
  • 本食感評価法には、応力曲線のデータが取得できるテクスチャー測定機器と、応力曲線の解析を行うためのコンピュータおよび数値解析ソフトウェア(あるいはプログラミング言語)などが必要である。

具体的データ

図1 応力曲線の滑らかさの程度(A:ギザギザ、B:AとCの中間、C:滑らかな曲線の例)とフラクタル次元(FDR)、パワースペクトルの和(APS)、ピーク数(NP)および二次微分値の総和(CI)の関係

表1 応力曲線の特徴量における有意な品種間差、栽培時期間差およびそれらの交互作用

図2 歯触り(シャキシャキ感など)の官能評価値と二次微分値の総和との関係

その他

  • 研究課題名:病虫害抵抗性、省力・機械化適性、良食味等を有する野菜品種の育成
  • 中課題整理番号:211j.1
  • 予算区分:委託プロ(加工)、基盤
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:吉岡洋輔、堀江秀樹、杉山充啓、坂田好輝
  • 発表論文等:Yoshioka Y. et al. (2009) Breed. Sci. 59:139-147