キュウリ黄化えそ病中程度抵抗性のキュウリ系統27028930と山胡瓜~1

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要約

キュウリ系統27028930および山胡瓜~1は、メロン黄化えそウイルス(MYSV)を病原とするキュウリ黄化えそ病に対して中程度抵抗性を示す。本抵抗性は温度依存型で、ウイルス分離株に特異的である。

  • キーワード:育種素材、キュウリ、キュウリ黄化えそ病、ミナミキイロアザミウマ、メロン黄化えそウイルス
  • 担当:野菜茶研・野菜育種研究チーム
  • 代表連絡先:電話050-3533-3863
  • 区分:野菜茶業・野菜育種
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

キュウリ黄化えそ病は、九州、四国および関東地方等で発生し、被害の拡大が懸念されている病害で、Tospovirus属のメロン黄化えそウイルス(Melon yellow spot virus、MYSV)を病原とするウイルス病である。MYSVはミナミキイロアザミウマによって永続伝搬され、本病を発症したキュウリの収量は減少し、特に幼苗期に発症すると被害は深刻となる。防除が困難なため、抵抗性品種の育成が期待されている。そこで、メロンおよびキュウリからそれぞれ分離した分離株MYSV-SおよびMYSV-FuCu05Pを用いてスクリーニングを行い、抵抗性のキュウリ品種・系統を見いだす。

成果の内容・特徴

  • 野菜茶業研究所が有するキュウリ遺伝資源398点の中でキュウリ系統27028930(タイ原産、農業生物資源研究所ジーンバンクJP番号140492、図1)および山胡瓜~1(原産国不明、JP番号140409、図1)は、キュウリ黄化えそ病に対して中程度抵抗性を示す。キュウリ系統27028930および山胡瓜~1の2つのMYSV分離株に対する発病評点は、罹病性品種「霜知らず地這」の発病評点よりも低く(表1)、病徴は弱い(図2)。また、キュウリ系統27028930はMYSV-Sに対して全身感染しにくい(表2)。
  • キュウリ系統27028930および山胡瓜~1は、MYSV-Sに対して温度依存型抵抗性を示す。接種後の気温が20°Cでは全身感染しないが、25°C、30°Cと接種後の気温が高くなるに従い全身感染株率が上昇する(表2)。
  • キュウリ系統27028930および山胡瓜~1は、ウイルス分離株特異的抵抗性を示す。MYSV-S と異なり、MYSV-FuCu05Pに対して少なくとも20°Cから30°Cの温度条件で全株に全身感染が認められる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • キュウリ系統27028930および山胡瓜~1と罹病性品種との交雑後代から、キュウリ黄化えそ病に対して中程度の抵抗性を示す系統が得られている。よって、キュウリ系統27028930および山胡瓜~1は、キュウリ黄化えそ病中程度抵抗性品種を育成するための育種素材として利用できる。
  • 国内では、MYSV-FuCu05PあるいはMYSV-FuCu05Pに近縁のウイルス株が発生し、問題となっている。一方、MYSV-Sの国内での発生は、1994年以降認められていない。

具体的データ

図1</a> キュウリ系統27028930(左)、山胡瓜~1(右)の果実

図2 MYSV-FuCu05P感染キュウリ植物の病徴(接種21日後)

表1 キュウリ系統 27028930 および山胡瓜~1の MYSV 分離株に対する発病評点

表2 異なる接種温度におけるキュウリ系統 27028930 および山胡瓜~1の MYSV 分離株に対する全身感染株率

その他

  • 研究課題名:病虫害抵抗性、省力・機械化適性、良食味等を有する野菜品種の育成
  • 中課題整理番号:211j.1
  • 予算区分:所内プロ(若手奨励枠)、基盤
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:杉山充啓、吉岡洋輔、奥田充、坂田好輝
  • 発表論文等:1)Sugiyama M. et al.(2009)Plant Breed. 128:696-700 2)Sugiyama M. et al.(2009)J. Gen. Plant Pathol. 75:381-387