高温によるレタス茎伸長を制御するジベレリン代謝酵素遺伝子
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要約
高温により引き起こされるレタスの茎伸長には、茎中の内生ジベレリンの増加が関与しており、これは特定のジベレリン代謝酵素遺伝子LsGA3ox1の発現上昇による。
- キーワード:高温、レタス、茎伸長、ジベレリン
- 担当:野菜茶研・野菜ゲノム研究チーム
- 代表連絡先:電話050-3533-3863
- 区分:野菜茶業・野菜栽培生理
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
高温条件下で抽台が誘導されるレタスにおいては、温暖化の進行により抽台に起因する品質低下と収量減少がより深刻な問題となるため、レタスにおける抽台機構を解明し、これを抑制するための技術開発が求められる。ジベレリン(GA)はレタスの抽台を促進することが知られており、また近年レタスのGA代謝酵素遺伝子が複数単離されていることから、高温下のレタス茎伸長時に律速となるGA代謝段階と関連酵素遺伝子を明らかにする。
成果の内容・特徴
- レタスのGA代謝酵素遺伝子(LsGA20ox1,2,3、LsGA3ox1,2,3、LsGA2ox1,2)(図1)のうち、レタスの茎で主要に発現しているのはLsGA20ox1、LsGA3ox1、LsGA2ox1であり、高温条件下で発現が大きく増加するのはLsGA3ox1(Accession No. AB012205)である(図2)。
- 前駆体から活性型への反応を触媒するGA3β位水酸化酵素をコードする遺伝子LsGA3ox1は、高温下での茎の伸長に伴い、特異的に発現が増加する(図3.A)。LsGA3ox1の発現増加に伴い内生GA1量増加がみられ、これは茎の上部で起こる(図3.B)。
- 3β位水酸化酵素の作用を阻害するプロヘキサジオンカルシウム剤の処理により、高温下での茎伸長が抑制される(図4)。
成果の活用面・留意点
- 用いたレタス品種は「リーフレタスグリーン」である。
- プロヘキサジオンカルシウム剤の処理では葉の矮化も伴うため、実用的利用には濃度や処理時期等の検討が必要である。
- プロヘキサジオンカルシウム剤はキャベツ育苗期の徒長防止やきく花首伸長抑制効果の農薬登録があるが、レタス茎伸長抑制での登録はないため、現在のところ生産現場では使用できない。
具体的データ




その他
- 研究課題名:野菜におけるDNAマーカー整備及び遺伝子機能解明と利用技術の開発
- 中課題整理番号:221i
- 予算区分:交付金プロ(気候温暖化)
- 研究期間:2004~2007年度
- 研究担当者:福田真知子、本多一郎、松尾哲、菊地郁、三橋渉(山形大農)、豊増知伸(山形大農)
- 発表論文等:Fukuda M. et al. (2009) J. Plant Physiol. 166:2077-2084