ウリ科野菜の種子単粒からのウリ科果実汚斑細菌病菌の検出方法
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要約
紙タオルを培地として試験管内でウリ科種子を培養し、水を加えて振とうして得た細菌懸濁液を選択培地に塗沫することにより、不発芽や発芽後無病徴となるものも含めた種子の各粒からウリ科果実汚斑細菌病菌を高率に検出できる。
- キーワード:ウリ科果実汚斑細菌病、種子、菌検出
- 担当:野菜茶研・野菜IPM研究チーム
- 代表連絡先:電話059-268-4641
- 区分:野菜茶業・生産環境
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
ウリ科果実汚斑細菌病は、植物防疫法の施行規則によってわが国への侵入を警戒している病害であるが、国内でも本病原菌(Aac)汚染種子由来の発生が認められ、確実な種子消毒が求められている。種子からのAacの検出はsweat boxと組み合わせたgrowing out法を用いた植物体の観察により行われているが、無病徴感染や不発芽種子の保菌の有無については明らかにできないため、種子消毒処理の効果を判定するためには不適である。そこで、消毒処理の有効性を正確に評価するため、種子からのAac高率検出方法を開発する。
成果の内容・特徴
- シュレッダーにかけた紙タオルを試験管に詰め、蒸留水をしみこませて高圧滅菌した後、種子1粒ずつを各試験管に播種し、シリコ栓をして30°Cで培養する(図1)。7または14日間の培養後、試験管に蒸留水を加えて30分以上激しく振とうして得た菌懸濁液を、Aac用選択培地を用いた塗沫法、または画線法により、40°Cで4日間以上培養した後、肉眼観察により生育したAac様集落を確認する。さらに、Aac様集落由来菌塊を、抗Aac抗体感作ラテックス粒子液に懸濁、混和してラテックス粒子の凝集反応を確認することによりAacを補助的に簡易同定する。
- 種子を7または14日間培養した後のAac用選択培地を用いたAac様集落の検出率は、100μlの菌懸濁液を用いた塗沫法が画線法よりも優れる(表1)。
- 塗沫法による選択培地分離とラテックス凝集法による簡易同定を組み合わせた方法では、無病徴汚染苗や不発芽種子からもAacが検出できるため、試験管内培養やセル育苗による発病率よりもAacの検出率が高くなる(表2)。本法は種子からのAac検出における精度と効率が従来のgrowing out法よりも優れる。
成果の活用面・留意点
- 本研究に用いた汚染種子は、各ウリ科作物の果実にAac懸濁液を注入して30°Cに3~7日間置いた後に採種したものである。
- 播種から選択培地上での検出まで18日間かかるが、煩雑な作業が少なく、連続で多試料を扱う場合に有効である。
- 熟練によって選択培地上の細菌集落の形状からAacの同定が可能となるため、抗体による同定は補助的に行う。
- 種子の試験管内培養法による病原細菌の検出は、他の種子伝染性細菌病菌の検出に応用できる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:野菜における土壌微生物、天敵の機能解明と難防除病害虫制御技術の開発
- 中課題整理番号:214k
- 予算区分:実用技術
- 研究期間:2006~2008年度
- 担当者:窪田昌春、萩原奈央子、白川隆、西和文
- 発表論文等:窪田ら(2009)関西病虫害研究会報、51:23-25